コラム♯484 「 インターンシップ 」
今週、一人の女子大学生がエフエム石川でインターンシップに臨んでいる。在学中に就業体験を行なって将来のキャリアに役立てようというのがインターンシップだが、この時代にFM放送局を選んでくれたところに何だか心強い味方を得たような気がする。若い人たちのラジオ離れが叫ばれる今、ぜひラジオの良さをキャンパスに戻ったら仲間に伝えて欲しいと思う。
ただ一方で、インターンシップといっても、放送現場のスタッフは出社時間もバラバラなら、こなす作業もきわめて専門的だ。おまけに僕らは時間に追われいつもアップアップしている。原稿の書き方や番組の進行などについていちいち説明している余裕はない。短期の研修でどこまで放送という仕事を理解してもらえるのかちょっと心配だ。
そもそもこの業界で働く人たちは「技術は盗むもの」だと心得ているところがある。一から十まで手取り足取り指導するのではなく、先輩の動きを見極めてそこから自分のパターンを作り上げていきなさいということだ。それは頑なな伝統職人の世界にどこか似ている。忙しくて誰も新人の面倒など見ていられないという事情も影響しているとはいえ、優秀な若い才能は評価し見守っていこうとする温かさも持ち合わせているのだ。
どこか手持ち無沙汰に番組の見学などをしているインターンシップの様子を見ているうちに、自分がこの業界に足を踏み入れたときのことを思い出した。僕も初めて仕事に就いた頃は右も左もわからずぼんやりとしていることが多かった。新人だからといって、とくに教育係がついてくれるわけでもなく、先輩たちは皆忙しくしていた。発声練習に明け暮れたといえば聞こえはいいが、実際のところは何をしていいのかわからず困惑していたというのが正直なところだった。
「こんな日がいつまで続くのか」漠然と不安を覚えたこともあったが、考えてみれば入社早々の人間が採用されてすぐに利益を生み出せるわけはないのだ。やるせない日々は自分の無力さを知る良い機会だったと今はありがたく思っている。
企業の繁栄のバロメーターは若者たちの支持が得られるかどうかだというのは昔も今も変わらない。よってインターンシップを受け入れる企業の中には、若い世代に必要以上に「明るく楽しい職場」をPRしようとするところもあるようだ。けれども職場というのはけっしてそんな和気あいあいとした要素ばかりではない。
以前、作家の曽野綾子氏が何かの雑誌で「すべての職業は、それを業とするようになったとたん、重苦しいものになる」などと書いていた。プロの世界は厳しい。持てる力を尽くして必死になってやらなければ食べていくことすらままならないのだ。
インターンシップで学んで欲しいのは何かと問われれば、僕は「プロとアマチュアの違い」と即答する。職業人としてのスタートは自分の無力さを知るところから始まるのだ。
ちなみにインターンシップの学生さんの最終日は僕の番組「FROM K!」の見学だそうである。
※ 次回更新は9月9日の予定
