2006 年04 月20 日
列車
列車は私を取り残したまま出発してしまった。これで何度目だろうか。私はと言えば、右手に握り締めた切符を見る事もなくホームに佇んでいるだけだ。もう追い付けないだろう。諦めだけで埋め尽くされていく私の行き先。
(中略)
あぁ、それでも乗ってみようかな。疲れたら途中で下車する事も出来る。そしてまた乗りたくなったら乗ればいいんだ。目的地には辿り着けないかもしれないけれど、それでも私はもう一度乗ってみようと思った。
列車は私を乗せてゴゥゴゥと走り出す。動き始めた列車の窓から私は顔を出し前と後ろをもう一度だけ見て窓を閉めた。そして左腕に抱えていた本の ページを開いた。
投稿者:未定at 22 :38| 文学 | コメント(0 ) | トラックバック(0 )