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2005 年03 月14 日

プンタアレナスの風 〜piscoの香りに包まれて〜 A

高さ80cm程のバックパック(でかいリュック)がドアに引っかかり
乗り込むのに手間取ったが、僕は助手席、連れは後部に乗り込んだ。

乗った瞬間に車内に充満するpsicoのアルコール臭が鼻を襲う。
足元には空き瓶が2本、なにやら後ろにも数本転がっているようだ。

ひえ〜、一晩中お飲みになってたのねぇ〜!

はやくも、乗り込んだことを深ぁく後悔しながら

「神様、仏様、おじいちゃ〜ん」

当時はまだ学生だったので、信仰がはっきりしない言葉を
つぶやき、下腹の辺りに手を置いたふりで、手を合わせた。

キュ キュ キュ キュ キューーッ!!!

豪快にホイールを空回しさせて、白煙を上げて赤鬼の車は急発進。

「おめら、中国人か」

「いや、日本人だ」

「おぉ、おらぁ日本人大好きだ。友達がいるぞ」

プンタアレナスは南アメリカ大陸南端に近い港町で、
日本の遠洋マグロ漁船の男達が立ち寄ることがあると聞く。
おそらく、日本人と知り合ったことはあるのだろう。

「ところで、これの飲め」

いきなり、ラッパ飲みしているボトルを差し出してくる。
なんか、汚いし、病気やだし、何かのときには
怜悧な頭脳と反射神経で生還したいので、断った。
赤鬼

「ほか、じゃ、これで飲め」

どこからか紙コップを出してきてダッシュボードの上で
注ごうとしているではないか。
赤鬼ドライバーの目は紙コップだけに注がれている。
窓の外の景色は飛ぶように後ろへと消え去っていく。
150キロ前後は出ているだろう。

「さ、飲め」

頼む、飲みますから、飲ませていただきますから、

ちゃんと前を見て暴走して下さい〜っ!

いっそ、恐怖を紛らわそうと都合よく自分を説き伏せ、
紙コップの中身を一気に流し込んだ。
喉は焼きつき、鼻腔を熱い息が通り抜けた。

車の通りがほとんど無い早朝の荒野の一本道だが、
暫くすると前方に先行する一台が見えてきた。

「え?」

同じ進行方向に向かって走っているはずの車が見る見る
近づいてくる。
速度差が100kmもあれば当然だった・・・

キーーーーッツ

フルブレーキと白煙!

間の前にテールが迫った!
ま、間に合わん!!

赤鬼は咄嗟にハンドルを切り対向車線に逃げた。

シュンッ!

空気がぶつかる音と共にその車は
猛スピードで僕達の車の脇をかすめて後ろの彼方へ消えた。

「OK だいじょぶだぁ。おらぁ運転自信あんだ」

嘘だ、大丈夫な訳がない。

「やっぱ、ここで降りるよ」(どうかオロシテクレー)

冷静を装い、できるだけフレンドリーに頼んでみる。

「ギロッ」

赤鬼は一瞥だけして走り続ける。

何も言えなくなった・・・

実は僕達が強く言えない理由は、赤鬼の脅威の体格だけではないのだ。
助手席に一本、後部に一本無造作に転がっている、巨大なサバイバルナイフ。
一本は乗ったときに僕の尻の下だ。
後ろのはヒデオがシートの下に隠した。

しかし、これだけナイフがゴロゴロ置いてあると、
赤鬼自身も肌身につけている可能性がある。

刺されて死ぬ可能性を選ぶか、事故で死ぬ可能性を選ぶか・・・

こんな究極の選択に、答えがでるかぁ!

何やら、ずっと赤鬼は僕や後ろの連れの方を見て話しかけてくる。
僕はもはや、適当な相槌だけ返すだけだ。余裕がない。

ふいに後ろのヒデオが叫んだ!

「前 まえぇ〜」

うわぁ、また一台、先行車が猛烈な勢いで迫ってくる〜!!!

                               (つづく)

投稿者:与五朗(よご)at 10 :54| 海外流浪 旅日記 | コメント(1 ) | トラックバック(0 )

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◆この記事へのコメント:

◆コメント

かなりおもしろい展開ですね。
楽しみにしています。
あしあとのコメント、ちゃんとついてまちたよ。
ちなみに時間が3/14の15時15分15秒!
おめでとうございまちた!!
(なにも出せないんでつけど)

2歳児より

投稿者: hidepochi54 : URL at 2005 /03 /14 18 :22

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