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2005 年03 月15 日

プンタアレナスの風 〜piscoの香に包まれて〜   最終回

この馬鹿鬼、さっきよりスピード上がっとるやないけぇ!!
多分、アクセルベタ踏み〜〜っ!!
前方にはトロトロ走るファミリーワゴンが急迫!!
激突!

避けろ〜っ!!!

馬鹿鬼は対向車線へハンドルをきった。

ぎゃぁ〜〜〜っ!!!!!!

なんと対向車線にはいかにも外国っぽい大型トレーラーが
こちらに向かって一直線!!

側道の無い道路は2mほど盛り上げられた上に
造られており、道から外れれば百数十kmで吹っ飛ぶ。
逃げ道は対向車線しかない。
(こういうことを0コンマ数秒で結構考えたりしてる)

顔は見えないがトレーラーも焦っているのが伝わってくる。
向こうにも逃げ場はない!

死ぬ〜っ!!! さよなら、愛しのあの娘〜!!!

ファミリーワゴンとトレーラーがギリギリ脇に
寄って出来た間のスペースに赤鬼は飛び込んだ!!

ガガガーーンッ!!バリバリバリッ!!!

横の窓が一瞬壁になり、火花とかいろんな物が飛び散り
次の瞬間、青い空と荒野の景色が戻った。

奇跡か!見事に両側を削りながらも推定100km
(減速はしていた)で間をすり・・・擦り抜けたのだ。

ミラーは両方無くなっている。両側のボディはガリガリだ。
いやしかし何より、生きている。
人生で初めて生きていることを実感できた。

前に増水の四万十川の川下りで溺れ死にかけたときでさえ
水を飲んでパニックになった分恐怖はなかった。
今回は妙に冷静でその瞬間まで目が開いていた。
それだけに死を冷静に覚悟していたみたい。

「あぁ、生きている」

赤鬼は車を止め、渋い顔でひとしきり車を見た後
ファミリーワゴンのお父さんとなにやら話している。

僕達はこの隙に逃げようかとも企んだが、大きな荷物と
荒野という状況を考えあきらめた。

10分も待ったか。眉間にしわを寄せた馬鹿鬼が車に戻った。

「オメラ、どごまで行くって?」

「いや、だからプンタアレナスまで」

「予定変わったから手前のマーケットで降ろす」

「!」

かなり手前の郊外型ストアだが、少しでも早く降りれるのは
ありがたい。

「わかった」

「ところで、そこまでで10万ペソ(1万ペソ1700円位)だ」

白タク!?示談で金取られて急遽、僕達に矛先が向いたのか!?

僕達は金がなかった・・・
一ヶ月以上も一日の宿、飯代を800円で抑える生活をしていた。

「払えるか!んなもん」
と実際はもう少しやさしめに言ってみた。

ギロッ「10万だ」

「3万」

「8万」

「頼む5万が限界」

「解った5万でええ」

恐喝金額の値引き交渉をしたのは初めてだった・・・

さすがに、馬鹿鬼も安全運転でマーケットまで走った。
マーケットにはオープン直前で客達の車が集まっている。
何やら、文明に戻ったようでホッとした。

車から降りると、馬鹿に金をわたし、
一応馬鹿の方から差し出してきた手を握り返した。
僕の人生で唯一、憎しみだけを込めたシェイクハンドだった。

馬鹿は、そのあともますますボロくなった愛車を見て回り、
僕達になにか言いたげであったが、さっさとその場を去った。

半球の青空を見上げ、大きくひとつだけ深呼吸する。

僕は、スピルバーグの「激突!」を見終わったときのような
不思議な、疲労感と爽快感に包まれていた。

             おわり

(注)これは仏壇工房「佛檀の山本」の日記です。
        

投稿者:与五朗(よご)at 10 :26| 海外流浪 旅日記 | コメント(2 ) | トラックバック(0 )

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◆この記事へのコメント:

◆コメント

よごろーざさん、旅団ブログへのコメントありがとうございました。
このブログ面白いですね。
ペイントでこんなに面白い絵が描けるなんて驚きです。
旅日記にも笑わせてもらいました。
まだまだネタがありそうなので又書いてください。
楽しみにしてます。

投稿者: ガチャピン : at 2005 /03 /28 22 :43

◆コメント

旅団blog 
ちょっとだけ、今が嫌になりました。

スナフキンの生き様ま永遠のあこがれです。

投稿者: 与五朗 : at 2005 /03 /29 00 :05

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