2010 年04 月01 日
Q: 外国人妻と離婚届を作成し、妻は届出を私に託して帰国しました。しかし、妻から離婚届不受理申請が出されていました。どうすれば?
A: 離婚届不受理申請が出されている場合、相手方配偶者は離婚届を提出することができません。申請をした配偶者が、離婚届には任意かつ円満に署名(押印)をした場合であっても、それにもかかわらず提出できないのです。 以前は、当該不受理申請には6か月間の有効期限がありましたので、期限が切れて新たな申請がなされない限りは、相手方配偶者が離婚届を提出することができました。しかし、現在は、当該不受理申請の有効期限がなくなりました。すなわち、一度不受理申請をしてしまえば、これを取下げない限りは、相手方配偶者は何時までも離婚届を提出することができなくなりました。 厄介なのは、不受理申請の取下には、申請者本人が、申請先の役所に直接出向かなければならないということです。申請にも取下にも厳格な本人確認が要求されるゆえ、郵送などでの取下ができません。したがって、御質問のようなケースですと、元奥様に来日した上で、役所に赴いて取下げてもらう必要があります。果たしてそのようなことが可能でしょうか。そのような協力が仰げるのであれば、当初から離婚に至らないことも多いのではなかろうかと思われます。 かような状況となった場合、あるいは、申請者が日本人であっても行方不明であるなどした場合、裁判離婚するしかないでしょう。なお、裁判離婚をしても、これが外国法を準拠法とした裁判であるときは、果たして当該裁判が日本法上の裁判離婚と同様のレベルのものであるか、法務局において確認される可能性があります。すなわち、裁判離婚とは言っても、その実態は調停離婚・和解離婚的な要素のものである場合には、離婚届不受理申請を取り下げる旨の一項を条項として挿入しておかないと、別途、その旨の書面を取得しなければならないことがあります。以上のとおりですので、離婚後に相手方が住居を変えるような事情がありそうな場合(外国人が帰国するようなケースや、日本人でも遠方の実家に帰るようなケース等)には、離婚届を作成したり、離婚協議書を作成する前に、一度、離婚届不受理申請書が提出されていないか御確認された方が無難なこともあるかと思われます。また、このような場合に、協議離婚の制度が存在する相手国の手続で離婚するならば、離婚に協力してもらえるケースもあるでしょう。しかし、この場合にも、裁判離婚のときと同様に気をつけなければならないのは、相手方が、日本における離婚届不受理申請を取り下げるということを明確に意思表示した書面を一緒に受領しておくということです。そのようにしないと、たとえ相手国で離婚した証書を日本の役所に提出する形で日本でも離婚をしようとしても、結局、「不受理申請が出ているから受理できません」と言われる可能性があります。そして、相手から受領する書面は、可能な限り相手国において公証しておいてもらった方が良いでしょう。
あるいは、相手方外国人に日本の在外公館に赴いてもらい、そこで日本式の協議離婚をし、離婚届不受理申請を取り下げる旨の明確な意思表示をしてもらうということも考えられます(在外公館等で、これが可能かどうか慎重に確認する必要があります)。
*日本人同士の裁判離婚手続においても同様の問題が生じえます。戸籍に裁判離婚をした記載を残すのを避けるために、離婚訴訟で「協議離婚する」旨の和解をして、離婚届の授受をすることがあるのです。しかし、この時に、不受理申請を取り下げてもらわないと、この和解調書だけでは、離婚が受理されなくなってしまいます。それゆえ、和解条項として、不受理申請を取り下げる旨の一項を挿入するか、裁判離婚とするのが無難です。
投稿者:よしの たいら
at 17 :20| 離婚−協議離婚
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