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2010 年07 月01 日

Q: 夫が暴力を振るいます。私が別居したら、子供に暴力を振るい始めました。子供を連れ出して、私と同居させても問題ないですよね。

A: 離婚されていないので、夫婦双方が親権者であると思われます。それゆえ、「私は親権者なのだから子供を連れ出して何が悪い。」という気持ちがおありかも知れません。
 但し、親権者だからといって、どんな行為でも許される訳ではないことは覚えておいていただきたいと思います。
 例えば、共同親権者である夫婦が別居中である場合、一方の監護下にあった子を別居中の共同親権者が連れ去った行為について、「監護養育上それが現に必要とされるような特段の事情が認められず、行為態様が粗暴で強引なものである」などの事情の下では、たとえ親権者のなした行為であっても未成年者略取罪に該当するとした判例があります(最高裁平成17年12月6日決定)。連れ去り行為をする必要性が認められず、かつ、連れ去りの態様が芳しくない場合には、親権者であっても、略取罪として認定されることがあるのです。
 御質問においては、共同親権者である夫の子に対する暴力から子を保護するために、子を夫の下から連れ去る必要性があり、その行為態様が子の福祉の観点から容認し得る範囲のものであれば、正当な行為として略取罪となることはないものと思料しますが、かような認定は簡単に判断できるものではありませんから、できれば連れ去りというような態様を取らないに越したことはないでしょう。
 以上のとおりですから、連れ去り行為者が親権者であるということは、その行為が犯罪を構成するか否かを判断するにあたって非常に大きな要素になるものの、それが全ての行為を許容させる程の決定的要因になり得るものではないということを肝に銘じていただきたいのです。
 
 

投稿者:よしの たいら
at 18 :12| 離婚−親権 | コメント(0 )

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