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2010 年09 月13 日

Q: 夫と離婚するときに協議書を作り、お互い慰謝料請求をしないことにしました。不貞の相手方だった女性に損害賠償できますか?

A: 言うまでもなく、不貞とは、一人でするものではなく相手がいるものです。婚姻関係が破綻する前の不貞であるならば、元夫と相手の女性は、共同してあなたに対して不法行為を行ったということになります。
 この場合、あなたの立場とすれば、元夫と相手の女性の双方に対して損害の賠償を請求することができるのが原則です。しかし、元夫との間では、既に協議書によって慰謝料の請求をしないこととしてあるということですから、元夫に対しては請求をすることはできません。
 しかし、不貞の相手の女性に対しては(上記協議書の作成において、相手の女性に対する請求もしないとの意思を有して慰謝料の請求をしないことを合意したのではない限り)、損害賠償請求が可能です。それも、二人が行った不貞行為により、あなたが被った損害全体の請求ができます。例えば、その損害が300万円であったとしましょう。その場合、元夫に対しては請求をすることができないのであるから、300万円の2分の1である150万円を相手の女性に請求することができるに過ぎないということではありません。この女性には300万円全額の請求ができます。つまり、元夫に対して請求をしないと決めたことは、女性に対する請求に影響を与えないということです。
 ただ、あなたに精神的なダメージを与えたのは、一義的には元夫であって、相手方女性は副次的な責任しか負わないので、元夫の固有の責任部分については相手方女性は責任を負わないという近時の下級審判例があります。この理屈でいくと、300万円のうちの一部が元夫の固有の責任部分として認められて、それ以外の部分が二人の責任部分として、その全体にしか請求ができないということになります。そのような判例もあるということは念頭に置かれておくと宜しいかと考えます。

投稿者:よしの たいら
at 17 :23| 離婚−慰謝料 | コメント(0 )

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