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2011 年12 月28 日

Q: 私はタイ人で妻は中国人です。妻は中国に帰ってしまいました。日本で協議離婚できますか?

A: 日本で協議離婚ができるか否かは、お二人が離婚するにあたり、日本の法律が適用されるのかどうかという観点から決まります。
 夫婦の双方が外国人で、なおかつ、それぞれの国籍が異なる場合には、双方の共通本国法というものがありませんので、まず「夫婦の双方が日本に常居所を有するものと認められるとき」への該当性を検討します。これに該当するならば、二人が離婚するにあたっての準拠法は日本の法律となるからです。その場合には、協議離婚が可能となります。
 次に、夫婦双方の常居所が日本にない場合であっても、「夫婦に最も密接な関係のある地が日本であると認められるとき」への該当性を検討することとなります。この場合にも、日本法が準拠法となるからです。
 夫婦にとっての最密接関連地が日本である場合とは、夫婦の一方が日本に常居所を有し、他方が日本との往来があるときや、あるいは、婚姻が日本での届出により成立しているとともに夫婦が外国で同居していたことが全くないときなどが考えられます。
 これに対し、夫婦にとっての最密接関連地が日本であるとは認められない場合とは、夫婦の一方ないし双方が日本で協議離婚届を出すために日本に入国したに過ぎないような場合が典型例です。
 よって、本設問のような場合は、奥様が帰国しているので、夫婦双方の常居所が日本にある場合ではないことから、お二人の最密接関連地が日本であると認められるような事情があるかどうかによって、日本における協議離婚の可否が決まってくるでしょう。
 ところで、日本に常居所地があるか否か、という要件と違って、日本が夫婦双方にとって最も密接な関連のある地であるか否かという要件は比較的判断しにくいので、離婚届を役所に届けたとき、役所が法務局に照会をすることなどがあります。
 また、準拠法を定めるにあたっての最密接関連地の判断が、法務局と裁判所とでは齟齬する可能性もあります(例:最密接関連地は日本ではないとして協議離婚の届出を受理されなかったが、離婚訴訟において準拠法は日本法と判断する判決が宣告される場合等)。
 最後に、上記は、本設問のように外国人同士の離婚の場合を前提とした議論です。一方が日本人の場合には、住民登録があれば日本法が準拠法となって離婚届が受理されますので、この点、混同されないようにお気を付け下さい。

投稿者:よしの たいら
at 15 :03| 離婚−国際離婚 | コメント(0 )

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