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2013 年12 月02 日

Q: 日本でハーグ条約が発効する前と後とでは、子供との移動や面会について何か違いが出てくるのですか?

A: ハーグ条約の目的を端的に言うと、a)不法な連れ去りや、不法に留置された子の迅速な返還と、b)面会交流権の効果的な尊重ということとなりましょう。
 この点、日本においてハーグ条約が発効する前になされた連れ去り(移動)は、当該条約の適用の対象外ということとなります。なお、一度目の連れ去りが一国内でなされ、その後さらに国外に連れ去られたケースにおいて、国内での連れ去りは条約発効前であったけれども、国外への連れ去りは条約発効後になされたという場合は、国外への移動の時点が問題となり、結果として条約の適用を受けます。これは、移動というものが「人」から「人」への移動(監護権者からの移動)ではなく、「国」から「国」への移動(常居所国から他国への移動)を言うものであるゆえに、国内の移動はそもそも条約の対象外となり、国外への移動こそが、その対象となるからです。
 さて、国外への不法な連れ去りがなされた後、TP(子を連れ去った親)における不法な留置状態が継続しているのであるから、留置されている期間中に条約が発効すれば、不法な留置にあたるのではないか、という考え方があり得ます。しかし、条約における「留置」とは、ある状態が継続している期間を指すのではなく、「特定の時に発生した出来事」を指すものと解釈されています。また、条約上、「移動」と「留置」は何れか一方しか認められないものと考えられています。それゆえ、不法な連れ去り後に不法な留置が継続しているという考え方は取れないのです。不法な連れ去りのない場合に限り、ある特定時において不法な留置が発生したものと考えることとなります。また、この時点が、条約の発効時と大きく関わってくるものであり、かつ、常居所国への返還を求められる1年という期間の起算点となるのです。
 一方、面会交流権の効果的な尊重という観点に鑑み、同権利を行使するためには、仮に過去に不法な連れ去りや留置があり、これが条約発効前の出来事であったとしても、その行為の時点と何ら無関係に、当該権利を尊重する方向で条約が効力を有します。すなわち、条約の発効前に不法な連れ去りないし留置があったケースであったとしても、条約発効後において、条約に基づいて面会交流権が尊重されることとなります。
 *さらにいえば、不法な連れ去りないし留置が存在せずとも、現時点において、国際間で面会が妨げられている場合には、両国がハーグ条約加盟国である限り、面会交流を実施あらしめるための援助を当該条約に基づいて受けることが可能です(平成26年4月14日追記)。

投稿者:よしの たいら
at 13 :57| 離婚−ハーグ条約 | コメント(0 )

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