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2014 年04 月08 日

Q: ハーグ条約による出国禁止命令と旅券提出命令について教えて下さい

A: 出国禁止命令及び旅券提出命令についてポイントとなる点を、いくつか挙げてみます。
 − 子の返還申立事件が裁判所に係属した場合に申立が可能となり、裁判所が命令を下すことができる(今後の子の連れ去りによる害悪の発生を防止し、子の返還を実現させるため)。
  ⇒ 面会交流を求める事件の申立がなされた場合には発令されない。
  ⇒ 子を連れ去られた者による連れ戻しをも防止する趣旨から、TPからLBPへの申立も可能である。
 − 出国禁止命令は、当該命令申立事件の相手方が、子を連れ去ることが可能な状況の有無、子を連れ去る動機の有無、子を連れ去ることについての障害の有無等の事情が考慮されて判断される。
  ⇒ TPに対する申立がなされた場合において、子の健康状態や就学状況、TPの生活状況等から考えて、出国することができないような事情があれば、申立は認められない。
  ⇒ LBPに対する申立がなされた場合において、LBPが子らの居所を知らず、面会等の機会もないという事情があれば、申立は認められない。
 − 出国禁止命令申立事件の相手方が子のパスポートを所持していると認めるときは、裁判所は、申立により、パスポートの中央当局への提出を命ずる裁判をしなければならない(出国禁止命令の実効性を担保するため)。
 − 旅券提出命令の申立を行うには、出国禁止命令の申立がなされていることが前提となる(同時申立でも可)。
 − 出国禁止命令申立事件の相手方が子のパスポートを所持しているときに限り、裁判所は、旅券提出命令を発令することができる。
 − 親のパスポートに子が併記されている場合は、旅券提出命令は却下される(当該パスポートは子の名義ではなく、相手方たる親の名義であるため)。
 − 出国禁止命令が効力を失う場合には(子の返還命令の確定等)、旅券提出命令も効力を失う(なお、旅券提出命令申立だけ取り下げることは可能)。
 − 出国禁止命令の申立及び旅券提出命令の申立に対する決定については、いずれの判断であっても(禁止・提出が認められても、認められなくても)、即時抗告という形で不服申立が可能である。
 − 出国禁止命令ないし旅券提出命令が発令された場合、即時抗告が申し立てられても、出国の禁止ないし旅券の提出義務は効力を生じる。当該効力の停止を求めるには、即時抗告とは別途、執行停止の申立を行い、これが認められなければならない。当該申立が認められるには、担保を立てなければならない可能性がある。
 − 出国禁止命令が確定した後で、事情の変更がある場合には、裁判所は、申立により、出国禁止命令を取り消すことができる(子が修学旅行のために海外に行く必要がある場合等)。なお、出国禁止命令が取り消された後、事情の変更が止んだ場合(子が修学旅行から帰ってきた等)で、さらに発令の必要性があれば、新たに出国禁止命令申立をすれば、発令を得ることができる。

投稿者:よしの たいら
at 16 :29| 離婚−ハーグ条約 | コメント(0 )

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