<< 前のエントリ | メイン | 次のエントリ >>
2009 年10 月15 日

Q: 外国人女性と日本法上結婚しましたが、女性が来日せず金の無心をして居なくなりました。戸籍に傷がついた気分です!

A: 御質問のように婚姻の実体がない可能性がある場合には、婚姻の無効や婚姻の取消を求めることが考えられます。ただし、形式的にも、婚姻という事実関係が成立した以上は、それを完全になかったこととするのは不可能ですから、婚姻の無効や取消が認められる場合は極めて限定されています。また、婚姻の取消については、その効果も将来に向かって生じるに留まり、過去に遡って婚姻の効果が消滅するものではありません。
 婚姻の無効の主張として考えられるのは、「社会通念上婚姻共同生活の本質を欠く場合」や、「仮装結婚」の場合でしょう。前者の例としては、宗教団体が主催した合同結婚式のケースなどにおいて、判例で婚姻無効が認められたことがあります。後者の例としては、外国人がビザを取得する目的だけで婚姻し、婚姻の実態のないケースなどが挙げられます。御質問のケースですと、女性の主観次第ではありますが、上記何れの主張も可能な場合があるでしょう。来日することなく、すなわち、婚姻共同生活を営むことなく女性が居なくなってしまったのであり、女性が当初からその意思を有して行動していたとしたら、結婚は仮装と言いうるからです。
 これに対して婚姻の取消の主張として考えられるのは、「詐欺によってなされた婚姻である」ということでしょう。女性は、婚姻生活を営むつもりもないのに、あなたを欺もうした結果、あなたが騙されて婚姻を成立させたというようなケースですね。こちらも御質問のケースで主張し得るものだと考えます。
 ただ、無効にしても取消にしても、被告側の主観(内心)を裁判で立証するのはかなり難しい作業となると思われます。
 それと、忘れてはならないのは、国際結婚の場合に、婚姻の無効や取消を裁判上請求するのであれば、婚姻意思の存在等は、婚姻をする両者に必要なものであるところ、@この意思があるかどうかや、A意思がない場合にどのような結論になるのかを判断する際に適用される法律は、それぞれの当事者の本国法であるということです。すなわち、例えば、あなたがA国の女性と結婚して、その後、婚姻の無効や取消を、当該女性には婚姻の意思が当初からなかったことを理由として争う場合には、女性における婚姻意思の存否や、婚姻意思がなかった場合に婚姻が取消になるのか、それとも無効になるのかは、A国の法律に基づいて判断されるということなのです。

投稿者:よしの たいら
at 19 :37| 離婚−婚姻無効・取消 | コメント(0 )

◆この記事へのコメント:

※必須