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2008 年05 月17 日

プラトンの洞窟

手作り立体映像は「KAGE 3D」という。以前は KABE と呼んでいた。どちらも「人間は洞窟の中で、世界そのものでなく、炎によって映し出された世界の影ともいうべき映像を見ているにすぎない」というプラトンの洞窟の比喩に由来する。
北村式全天周立体映像総合体験装置の頭文字である。

1985年つくば博(科学万博)の富士通グループパビリオンで上映されたオール CG による世界初の全天周立体映像「ユニバース」を見て、それをアナログ・ローコストで再現しようと考えたものである。考案は1987年頃。

つくば科学万博は映像博ともよばれ、各種巨大映像や、立体映像の見本市のようだった。
なかでも富士通館の全天周立体映像はすごい人気で2〜3時間並ばないと見れなかった。
富士通のスーパーコンピュータとCG 専用並列処理コンピュータLINKSを使った世界初のOMNIMAX-3D作品であった。宇宙から分子構造の世界へ。マクロからミクロへ。土星の環をくぐり、結晶の中へ入っていく映像はモノクロで10分くらいのものだったが、衝撃的なものだった。
特殊映像博物館
http://www.tcat.ne.jp/~oguchi/3D%20LIST%20(1985).htm

当時部屋の中にプラネタリウム用ドームを持っていたヒゲキタはCGを魚眼レンズか球面鏡でドームに映し出せば全天周映像ができ、左右の視差がある映像を2重に映し、メガネで分離できれば立体映像になることはわかっていたが、コンピュータもなく、光学の知識もないのでどうしようもなかった。
ひとつだけ簡単にできそうな方法はアメリカの科学博物館で行われているという、2台のスライドプロジェクターで赤と青の光を物体に投影し、その影を見るというものだった。しかしスライド投影機もないし、この方式では影のピントがあわなくてぼけた影しかできないのではと思われた。

別の実験で土星の模型を作り、太陽の光が落とす土星の環の影の形を調べていた頃のこと。
風呂に行こうとアパートから外にでてすぐの交差点で信号待ちをしていた時、道路に落ちた電柱の影が2つの明るい外灯のせいで2重に映っているのをみて、ひらめいた。
光源を点光源にすればピントあわせはいらなくなり、しかも全天周に投映できる!
風呂はやめて部屋に帰り、豆電球と電池、セロハンを組み合わせて試作装置を作った。
光源とメガネの両方でセロハンを使うので、ふつうの豆電球ではとても暗い映像になるのだが、ドームが直径2.3メートルと小さいためなんとか見えた。土星の模型でやってみると、富士通館のように頭上を通っていった。できる! あとは光を明るくしてするだけだ。

つぎの年、北陸地区アマチュア天文研究発表大会で、その次の年には日本アマチュア天文研究発表大会で発表した。
1997年から工房ヒゲキタとして手作りプラネタリウムと立体映像の全国出張投映をおこない、のべ9万7000人の人に見てもらっている。
2006年には学研科学大賞の優秀賞を受賞した。
学研科学大賞WEB
http://www.gakken.co.jp/kagakutaisho/jyusho.html
そして今年、中国餃子事件で中止になったイベントのかわりに行った、
MAKE: TOKYO MEETING で見た人が書いた記事が有名ブログに載ったわけ。

作り方は昨日の日記に書いたのでぜひ自分で作ってみてください。
なぜ見えるかの理論編はまだ書いてないので次に回します。

投稿者:ヒゲキタ
at 14 :48| 日記 | コメント(2 ) | トラックバック(0 )

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◆この記事へのコメント:

◆コメント

風呂に入っている途中なら「エウリカ!」でしたね。

投稿者: むろいし : at 2008 /05 /22 05 :55

◆コメント

まさにそう。裸で駆け出す陽気なアルキメデスさん。興奮しました。

上にも書いたように、北天研でスペースアートについての研究発表をする10日前くらいだから年月日はだいたいわかるはず。来年の発表はこれだって思ったから。

ちなみに「プラトンの洞窟〜」は最初の多面投映型バーチャルリアリティ装置CAVEの由来-のパクリ。

投稿者: ヒゲキタ : at 2008 /05 /22 21 :45

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