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2008 年12 月30 日

滝沢



学生の時の天文サークルに滝沢という男がいた。
新歓コンパでの後、1日中吐いて倒れていたので知られている。
よく飲み過ぎては寝込んでいた。
俺は同じクラスでよくアパートに飲みに行ったりしていたが、
サークルの合宿などにはあまり参加しないやつだった。

軍事オタクでプラモデルやモデルガンなんかも作っていた。
日吉のアパートにいたが、近くに高校の同級生の坂本という男も住んでいた。
坂本は慶応大生で、滝沢以上の軍事オタク。
今では軍事イラストレーター兼ライターで本も何冊も出している。
よく3人でマンガやアニメや映画の話をした。

滝沢とは同じクラスだったが、同じ授業はあまり受けてなくて、学校ではあまり会っていないが、
一緒に東急ハンズへ行ったり、オールナイトのアクション映画を見にいったりした。
滝沢は俺達とは一緒に卒業できなかったようだ。英語の単位が足らなかったらしい。

卒業して就職した長野の郵便局にいる頃は、たまにハガキが来た。郵便番号と名前だけでハガキは着いた。
何年かして民営化の頃までには郵便局はやめたようだがバイトで配達の仕事はしていたらしい。

7、8年前、長野に行く機会があったので、滝沢の実家に電話したら、
父親らしき人が出て、「そんなやつはいない!」と言われてしまった。
勘当でもされたのかと思っていたのだが、
今年になってまた長野へ行くので実家に連絡先を教えてほしいとハガキを出した。
すると滝沢本人から電話があり、ずっと実家にいたという。

つまり親父さんと折り合いが悪く、家庭内で没交渉だったというわけ。
たまたま電話した時に親父さんが出たようだ。
結婚はしていない。

今年の5月に長野に行った時に連絡して飲みに行った。
滝沢は学生の時と同じように飲んでいた。
肝臓は悪そうだったが、いままで飲んできたのなら案外強いのかも。
サークルの同期や先輩は全国に散らばっているが、自分も全国出張プラネタリウムなのであちこち行っているのでサークルでは一番OBと会っている。仲間の消息などいろいろ話した。
滝沢はいまでも車に望遠鏡を積んであって、いつでも見に行けるようにしてあると言っていた。
合宿とかにはあまり行かないやつだったけど、あいつなりに星が好きでずっと続けていたようだ。

先週、東京出張があり、帰りに長野を通るのでまた滝沢と飲むかなと思い、ハガキを出しておいたのだが、結局東海道経由で帰ることになった。

出張から帰ってみると、滝沢から喪中年賀欠礼のはがきが来ていて、
絶交中の親父さんが亡くなったのかと思いよく読むと、滝沢本人が死んだというお母さんからのハガキだった。
9月に自宅階段から落ちて内臓損傷で死んだのだという。

25年ぶりに会って、それから4カ月後に死んでしまうなんて。
卒業してから会ったのはたぶんサークルでは俺だけじゃないだろうか。
今年連絡がついていなかったら、死んだこともサークルの誰も知らないままだったはずだ。

人は死んでいく。自分も半世紀生きてきた。サークルでも亡くなった先輩はいる。
家族が亡くなり、仲間が亡くなる。
これからどんどんそういうのが増えてくるわけだ。
歳をとるということはそういうことなんだな。

名も無き1人の男が死んだ。星と酒とプラモデルが好きだった。
体の原子は地球に散った。
記憶も時の流れにいつか消えてしまう。
それまでしばらくの間、皆の思い出に留めておいてほしい。

投稿者:ヒゲキタ
at 23 :08| 日記 | コメント(3 ) | トラックバック(0 )

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◆この記事へのコメント:

◆コメント

 私は、大学の天文サークルで、滝沢さんの1年後輩です。新潟県上越市出身と言うことで、滝沢さんには結構かわいがってもらいました。その滝沢さんが亡くなっていたとは、まったく知りませんでした。学生時代は、もう25年位前のことなので、細かな事は大方忘れてしまったのですが、それでも記憶の中には滝沢さんはまだ生きています。これを機会に、学生時代の写真でも眺めて、学生時代の先輩、後輩、同級生の初夢を見ようかなと思います。

投稿者: 塚田 和浩 : at 2008 /12 /31 09 :46

◆コメント

この間横浜で大柳と飲んで来た。
滝沢と会ったよ元気だったよと話していたんだが。
俺らも50歳だしまたみんなで集まって飲みたいな。

投稿者: ヒゲキタ : at 2008 /12 /31 11 :52

◆コメント

ちょっとこの投稿にそぐわない書き込みですみません。
今日の北國新聞にヒゲキタさんが大きく載っていました。

投稿者: みね URL at 2009 /01 /05 23 :28

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