2007 年07 月16 日
悩ましき日本脳炎ワクチン
山梨県の中学生が日本脳炎ワクチンの副作用で寝たきりの状態になったのがきっかけで、2005年5月に厚生労働省の通達を受け日本脳炎の定期接種は事実上中止の状態です。副作用の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)は70〜200万回に1回の頻度で起こります。ところが、副作用のより少ない新型ワクチンの承認が大幅に遅れ早くとも2年後になるということです。昨年9月に熊本県で3歳児が発病しました。5歳以下の患者さんが出たのは15年ぶりのことです。国としては一刻も早く定期接種を再開したいのにワクチンがない状態になってしまいました。旧型のワクチンは製造体制がなく、在庫量も限られています。このまま待てばよいのか、保健所に申請して旧型ワクチンを接種した方がよいのか悩ましい限りです。接種を希望されも旧型ワクチンしかなく、しかも入荷が困難な状況ですのですぐに接種はできません。日本脳炎は居住地域や年齢などの要因で感染のリスクが異なります。東日本よりも西日本、都市部よりも農村地帯の方が高いリスクです。また、高齢者や乳幼児は要注意です。日本脳炎の感染源は蚊です。ヒトからヒトへの感染はありません。一般的な注意として戸外へ出かけるときには、念のためできる限り長袖、長ズボンを身につける、露出している皮膚への蚊除け剤の使用、室内での蚊取り線香の使用、網戸や蚊帳(かや)の使用など、ウイルスを持った蚊に刺されないよう十分な注意をすることをお勧めします。蚊の発生を減らすためには、住居周辺の水溜まりを作らないことに心がけることが重要です。また、側溝等に落ち葉や土砂がたまり、流れが滞らないように定期的に清掃することも有効と考えられています。
日本脳炎ワクチンについてのお問い合わせが増えています。正直に言って私自身、こうしなさいとは言えないのです。それぞれの状況下に応じて対処していくしかありません。小児科の先生方の間でも意見が分かれています。
投稿者:ドクターヒッポ
at 23 :25| 日記