2006 年06 月20 日
「立喰師列伝」&「マグダル パイナップルパン王子」
まずは「立喰師列伝」だが、やー、押井守ですなあ。押井節炸裂ですわ。予告編では活劇っぽい感じだったけど、フタを開ければやっぱり押井守というところが、押井守だなあ。
で、内容なんだけど、「立喰師」(とどのつまりは食い逃げなのだが…)なる架空の存在を通して終戦の昭和史を総括する(映画の中の解説にも出てくる連合赤軍のリンチじゃないよ…)架空ドキュメンタリーで、時代ごとの「立喰師」の手法や生き様を通して、その時代について考察してゆくという知的エンターテイメントだ。
だがしか〜し、発想はいいんだけど、語り口というか、この場合は台詞回しの独特さが、なんだかついてけな〜い。ただでさえ難しい内容を、ことさら難しく、というか押井守調の生硬な文体で解説されのは正直キツイ。さらに情報量そのものも多いので、あれよあれよという間に話が進んでいってしまう。原作は押井守の小説ということなので、これを読んでから来いということなのか?
まあこの辺は彼一流の洒落であり、一種の韜晦だと思うのだが、この、洒落そのものの映画に、さらにもうひとつ洒落をかぶせる必要があるのだろうか。アイデア+映像で十分だと思うぞ。
とはいうものの、資本化した立喰屋とも言うべきファーストフード店とプロフェッショナル化した立喰師との対決は、まさにプロ対プロの仮借なき戦いで、エキサイティング!特にロッテリア対「ハンバーガーの哲」のスペクタクルは一見の価値あり。まあ、なんだかんだ言って原作本とDVD買っちゃうかもね〜。
一方、「マグダル パイナップルパン王子」だが、こっちはなんだか皮肉っぽいけどハートウォームな、でも切ない映画。このテイスト、嫌いじゃないなあ。
香港の再開発間近の下町に住む子ブタのマグダルの日常とハリーポッターに触発されたお母さんの「パイナップルパン王子」=マグダルのお父さんのお話が中心で、あまりまとまったストーリーはないけど、なんかイイ。ギャグも香港のこすっからいトコをネタにしたものが多いが、キャラがかわいいせいか嫌みがない。
そしてこの切なさ。何なんだろう、特にこれというものがないが、じんわり泣ける。いま、これを書くために公式?HPでストーリーを見返していたのだけど、なんだかチョット切なくなってしまった。もう40なのに…。
あと、映像的にも結構おもしろい。町並みが3Dアニメーションなんだけど、あちこちのビルの上のクレーンが一斉にぐるぐる回ってたり、ビルが崩れていったり、クルマがめまぐるしく往来していたりと、いかにも活気に満た香港てな感じ。港のコンテナなんかも造形的で結構センスがある。
それにしても、何だかイイよなー。思いのほか深い映画だ。こんなんだったら、ラブリーを誘えばよかったなあ。
で、今回のシネモンド「大人アニメまつり」の3本(「立喰師列伝」「マグダル パイナップルパン王子」「モルタデロとフィレモン」)のうち一番面白かったのは、バカっぽさと、凶悪なまでの弾けっぷりで「モルタデロとフィレモン」に決定。でも彼女といくなら「マグダル パイナップルパン王子」かな。これはホントイイ映画。
まあ、客が入ってたのは「立喰師列伝」だったけどね。
しかし、「立喰師列伝」、コアな客層だったなあ…。恐るべし押井…。
投稿者:親方
at 03 :15| 映画
| コメント(0 )
| トラックバック(0 )