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2006 年07 月08 日

「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

久々のクローネンバーク監督作。
クローネンバークは、大学時代に見た「スキャナーズ」以来のファンなんだけど、最近は落ち着いてきた、というかソフティケートされてきた分、禍々しさや狂気みたいなものがなくなったような気がする。1982年の「ビデオドローム」なんかは、バーチャルリアリティによる現実感の崩壊を予見したような作品で、現実と幻覚の境界が崩れ、映画自体もグズグズと崩れていくような実にアブナイ映画であった。この辺のシュールな感じというのが最近あまり見られなくなったのがちょっと物足りない…。内容は十分アブナイけど、映画そのものがアブナイってのは、最近ないよなあ。
しかし、この作品はなかなか見ごたえがあった。こじんまりまとまってるなという感はあるが、心に残る禍々しさはあると思う。
あらすじは、良き夫であり父親である主人公が、職場である食堂に押し入ってきた凶悪な強盗を秒殺し、一躍ヒーローに。しかし、それ以来、人相の悪いギャングに付きまとわれてしまい、ついに家族に危害を加えそうになったのでこれも秒殺。そして、どうやら彼は、結婚前、ギャングの殺し屋(というか金と楽しみのために人を殺していたというタチの悪い人)だったらしいとバレて家族はドン引き。さて、彼は元の幸せな生活に戻れるか、といった作品。
「ロング・キス・グッドナイト」(エンターテイメント職人!レニー・ハーリン監督作)の平凡な主婦が実は記憶をなくした凄腕工作員だったというパターンを連想するけど(最近では「ボーン・アイデンティティ」なんかそうか?見てないけど)、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のほうは主人公が暴れれば暴れるほど引いてしまうようにできている。身に降りかかる火の粉を払うため、悪人たちをやっつけるというのは変わんないんだけどね。一般ドラマの中でアクションヒーローが暴れるとこんな感じになっちゃうのかなあ。
この辺はクローネンバークも意識していると思う。というのも主人公の秒殺ぶりが、あまりに鮮やか。殺しのプロとはいえ、とてもギャングとは思えない。例えて言うなら、まさにアクションヒーローそのものの鮮やかな殺しっぷりなのだ。ということは、実は日常生活の中にアクションヒーローという一種の暴力幻想が侵入してくるというのが隠しテーマじゃなかろうか。
それよか、誰か「ビデオドローム」リメイクしてくれないかな。ビデオをパソコンに置き換えれば十分いける、というか、その方がしっくりくるよな。うーむ、「ビデオドローム」…あまりに時代に先駆けすぎた作品…。

投稿者:親方
at 04 :11| 映画 | コメント(0 ) | トラックバック(0 )

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