昨日の話
小さな地方都市に住んでいる。
小学校や保育園での仕事が多いので、たまに昔の友達が親として来ていたり、役員かなにかでよんでもらったりする。
子供達も大きくなって、中学高校に行くようになると、そんなことも少なくなってくるのだが。
A は今のかみさんの前に何ヶ月か付き合っていた女の子だ。
別れてしばらくした後、交通事故で大けがをしたと人づてに聞いていた。
この仕事をし始めたころ、イベントで A に会った。プラネタリウムを見にきてくれたらしい。
だが、A は車いすに乗っていた。
ドームは車いすが通れるような構造になっていなかったので A は見ることができなかった。
ごめんな。車いすでも入れるように改良しておくよ、とオレは A に言った。
オレはドームの入り口を作り直し、車いすでも入れるようにした。
バリアフリー化したわけだ。
障害者施設で車いす8台くらい入れて投映したこともある。
A から結婚しました、というハガキがきた。
その後、子どもの写真も送られてきた。
A に次に会ったのは5年くらい前。やはりプラネタリウムを見にきてくれた。
A は車いすのままだった。脊髄損傷なので治らないらしい。
プラネタリウムのほうも改造して星が多くなっていた。
今度は見せてあげることができた。
昨日は金沢市内の小学校の親子活動で投映してきた。
終わって片付けを始めたころ、3、4年生くらいの男の子が近寄ってきて話しかけてきた。
「A を知ってますか」
顔が A にそっくりだった。
「知っているよ。車いすのお母さんだ。君は息子だ」
お父さんと来ていたようだ。A はいなかったが元気でいるのかどうか聞き忘れた。
投稿者:ヒゲキタ
at 23 :56
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