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2007年11月29日

欲望という名の電車

それを本物の愛と信じた時から、その人生は狂っていったのかも知れない。

たった一人を崇拝し、結婚という名の契りも交わしたのに、彼は男を愛する人だった。
裏切られたという思いと、彼を救えなかったという驕り。
失ったものを補うように、男たちを渡り歩いているうちに、家も職も失って、彼女はとうとう疲れ果てる。

誰も知らない土地で、もう一度やり直そう。安らぎを求めて必死に自分を繕ってみるが、過去は彼女を逃がしはしなかった。

掴んだと思った幸せは、水のように零れ落ち、泡のように消えていく。
身体を売っていた女は、肉体も心も他者にいいようにされて当然なのだろうか。
そんなことはあるはずないのに、彼女に訪れる悲劇は容赦なかった。

――逃げ込んだ先は狂気。彼女は白い衣装に身を包んでいた。


そんな感じのお芝居でした。


タクミくんシリーズの一節ではないけれど、
狂うことで、幸せになれる人間は、確かにいる。
彼女ブランチもその一人なのだろう。

芝居の最後にお迎えに来たあの男は、ちらしによると医師らしい。
私はてっきり死神の象徴なのかと思っていた。
ちなみに見知らぬ男は絶望の象徴かと。
決して楽しい話ではないけれど、とても引き込まれる、いい舞台でした。

ミッチ役の伊達暁さんがとても気になりました。
てか、すごくいい声。顔も好みの系列で、いい感じでしたよ〜。
スタンリー役は北村有起哉さん。
ちらしを見ながら今どこかで見た顔だなぁと思っていたら、SPのテロリストですね!あぁ、彼か!!ってな感じですわ。北村和夫さんのご子息だということも驚きだったのですが、こうして見ると確かにどことなく似ていますね。
ステラ役の小島聖さんも可愛かったです。お姉さん思いなところがよく出ていたと思います。
そしてブランチ役の篠井英介さん。本当に見事でした。表現のしようがないくらい。彼に性別は関係ないですね。ひとつの存在として確立されていますね。さすがです。

楽しい夜でしたよ〜。

投稿者:とうだat 06:37| 観劇 | コメント(2) | トラックバック(0)

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◆この記事へのコメント:

またまた、おじゃまします。今、まだ芝居の余韻を引きずっています。時々、ぼーっと考えたりしながら・・・。たしかにあの芝居は、ブランチが主役であり、最も不幸な人なのですが、他の登場人物達にもそれぞれに抱えた闇があり、ブランチが起爆剤となってたちまちにそれが露になった様な・・・。人間は、それぞれが互いに作用しあいながら生きているのでしょうねぇ。結末は、あの様になりましたが、ある意味ブランチは、幸せになり、他の登場人物達はこれから先、心に重い枷を付けられたみたいに感じました。昔聞いた話で、神は人間に対して苦しみから逃れる為に二つの事をお許しになった・・・一つは号泣する事、もう一つは忘却する事。ブランチは、忘却の世界に入ってしまったのだろうか・・・。私の勝手な解釈ですがね。(苦笑)また、これに懲りずにいい芝居があったらお誘いしますので、お付き合い宜しくです!!では、またね〜。

投稿者:KOME: at 2007/12/01 23:00

>KOMEちゃん
またまた一緒に観劇出来て、楽しかったです〜。素敵な一夜をありがとう!!

スタンリーは何故あの晩、ブランチに手を出したのでしょうかね。自分の子供が生まれるって日に。
腹癒せでしょうか。大っ嫌いだったからでしょうか。虫唾が走る相手でも、犯すという行為であれば、男の人は立たせることが出来るのでしょうかね。

ミッチなら分かります。多分あの人はブランチの過去を知っても、罵っても、侮蔑しても、彼女のことがまだ気がかりではあるのだと思います。
だって愛していたんだもの。それは嘘ではなかったんだもの。

ステラはこのまま、何も知らずに一生を終えることが出来るのだろうか。
願わくば、そうであって欲しい。でなければ、ブランチが狂気に落ちた意味がない。彼女が狂ってしまった理由は、妹までもを裏切ってしまったという点に他ならないと思うから。


ミッチの枷は重いだろう。
スタンリーはその重さを分かっているのだろうか。もしかしたら彼には、枷すらかけられていないのかもしれない。それほどの下種野郎であってほしい。どうせなら、とことん。
ステラには、姉を救えなかったという枷だけであって欲しいから。彼女には、幸せになって欲しいから。だってそれが、ブランチの一番の願いなのだから。

投稿者:とうだ: at 2007/12/02 07:14

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