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2008年09月27日

長崎乱楽坂

 吉田修一の小説である。
 先日買ってきた3冊の中で、最初に取りかかった。
 任侠の世界に生きる男たちと、それを取り巻く女たちの世界に、突如少年が放り込まれた感じで、それが、離れの部屋に住む幽霊を見るという物語に、不思議な感覚に襲われながら読み進めた。第1章の終わりの怪しげな光景が、この後どう展開するのかとドキドキしながら第2章を開いた。
 第2章に入ったら、物語ががらっと変わっていた。
 つながりのないばらばらの物語群のようで、実は深いところでテーマが貫いている一つの物語だった。1章の終わりに突如現れた同級生の女の子が、後に全く違った姿で再会し、主人公と東京へ旅立つかと思えば、そうではなく、最後は、主人公が身を滅ぼして終わる。
 当初、「東京湾景」や「7月24日通り」から関心を持って読み始めたので、映画と原作の乖離に不思議な感じを持っていたが、実はこの作家は、物語と言うよりも心の深いところを描く純文学系の人だということにようやく気づいた。

投稿者:at Sushiat 23:33| 日記 | コメント(0)

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