みさと村だより

　新しい腕時計を買った。
　
　実は、しばらく腕時計を持ったことがなかった。理由はいくつかある。
　１つは、仕事柄、普段は至る所に時計があって、自分の時計を持つ必要がない。
　２つに、携帯電話を持つと、時計の役を果たしてくれる。しかも、電波を受信して自動的に正確な時間を表示する機能がついているので、時間が狂う心配がない。
　３つに、昔、スキーで転んで手首を痛めた時、腕時計のせいで手首が固定されたことが原因だと考えられ、恐怖感があった。
　４つに、いざフォーマルな場に出る時には、新婚旅行で旅先で買ったおしゃれな時計があるのでいいと思っていた。

　４月から新しい職場に変わり、ちょっとすきっとした格好をして行きたいと思った時、腕時計もすることにしたいと思った。ところが、いつものフォーマル用の時計をしようと思ったら、電池切れで止まっていたのである。
　ここでホームセンターで電池交換をしていればよかったのかもしれないが、何となく、今時の時計ってどんなだろうと興味が湧いてきて、近所の時計屋さん（なのだが、県内有数の貴金属店の本店でもある）に行ったのである。
　電池交換をお願いして、待っている間、ふとショーウインドウの中をのぞいてみた。あらあらびっくり。時計って結構高価なものである。
　普段必要感がないから、便利さだけにしか関心がないから、2000円ほどのデジタルウォッチしかほしいと思わなかったので、せいぜい１万円から２万円ぐらいと考えていたが、その数倍の価格のものばかりであった。
　見ていると店員さんがやってきて、中から時計を取りだして紹介し始める。
　触れてみると、今までフォーマルに考えていた、今日、電池交換に持ってきた時計が、ちゃちなおもちゃに見えてきた。
　そうして、勧められた時計を思い切って買ってしまったのである。
　買ってしまった後で、電池交換が終わった時計が戻ってきた。改めて見比べて、やっぱりちゃちに思えた。ちょっと散財だったが、仕方あるまい。