2007 年8 月2 日
河童のクウと夏休み
家族そろって観た。久しぶりに良い映画だなと思った。クウは目の前で父親を人間に殺され、犬のおっさんは飼い主の少年から虐待され、最後は身勝手な若者にひき逃げされ、犬の飼い主の少年は毎日学校でひどいいじめを受け、菊池さんも両親のことで同級生からいじめを受け、主人公の少年も仲良くしていた友達からいじめを受け、河童の世界も日本の自然環境もすべて人間の好き勝手に支配されて破壊されていくのに、この映画は、そんなどうしようもなくつまらない人間をうらむことなく優しい目で慈しんでいる。どことなく、トトロを思わせるところもありながら、それとはまた違って、もっといろいろ日本の自然の美しさを感じさせてくれ、私たちに、どう前向きに、自分らしく生きていくべきかを感じさせてくれる映画だった。そして、誰に対しても謙虚で、自分が他の生命を食べて生きていることに謙虚で、ひとりぼっちであることに打ちひしがれることなく、命を授かったことを大切に生きる河童のクウの姿こそ、最も美しい人間のあり方だと思った。それを人間ではなく、河童のクウが持っていることに、最大の皮肉と最後の期待を感じた。
映画が終わっても、最後のエンドロールが終わって館内が明るくなるまで誰一人席を立たなかった。それだけ余韻の心地よい映画だった。