2017 年9 月9 日

日弁連公法系訴訟サマースクール

日弁連行政訴訟センターでは、ここ3年、司法試験受験生向けの憲法・行政法のサマースクールを行っている。これは訴訟実務家である弁護士の視点から憲法・行政法の論文式試験問題の検討をしているものだ。試験問題の検討と言っても、実際に出題された司法試験問題を検討するものではなく、現実に弁護士が直面しそうな事例を取り上げて、それを弁護士と研究者・学者と一緒に検討するものだ。その意味で、弁護士向けの極めて実践的な研修でもある。

今年は、9月1日、2日で、大阪大学で開催された。憲法は、大阪市ヘイトスピーチ条例を素材として、市民会館での集会と路上のデモ行進の規制問題を比較検討する問題を取り上げた。それも、市・県による規制の問題のみならず、私人間の差止めの仮処分の問題をあわせて比較検討してもらう問題とした。

行政法は、広島地裁高裁で判断の分かれた裁判例を素材として、社会福祉法人の仮処分選任をめぐる問題を取り上げた。中川教授からは、学生向けの問題としては「難問だ」と指摘されたが、実務家は常にこのような「難問」に直面している。

「難問」と言われたのは、何も悩まずに答案を書いたものが、途中で問題の本質に気づいて悩んでそのために答案を書けなくなったものよりもいい点がとれるのはいかがなものかという趣旨である。この「難問」を私なりに整理してみると、これは法の不備に起因する。

社会福祉法は性善説に立っており、仮理事選任も所轄庁が適切に仮理事を選任して問題を解決することを予定していて、仮理事選任に起因して紛争が生じることを予定していないから、不服申立て手続・不服申立て方法が整備されていない。しかも、社会福祉法は福祉サービス利用者のための公益目的であるのに、現実の社会福祉法人は民間の営利的団体が運営しているためにそこに支配権・運営権が絡んでくる。その両者の法の不備が相まって社会福祉法人の経営・支配権をめぐる紛争が発生してきたことに対して、弁護士・裁判官としてこれにどう対処するか。法の建前に即して事案を見れば、そこには司法が解決すべき紛争はないということになるから、やれ、処分性なしだの、原告適格なしだのということになる。
しかし、目の前にある紛争に直面して、これを紛争としてとらえて、何とか解決すべきだと考えると、そこから先は、どう法を創造するか、どう自分の持ち駒にあわせて(現実の法制度にあわせて)事案を構成し直し(整序し)、妥当な解決方法を見出すか。当然、そこにはAだからBなどというきれいな解決策はなく、どこかに無理はあり、でも紛争解決のためには無理を承知の上でより妥当な解決策を選択するかという悩みが生じる。
この悩みを正面に受け止めながら、弁護士も裁判官も法を創造することが求められている。

これが実務だと言うことが分かってもらいたくて出題したのだが、やはり「難問」だったか。

投稿者:ゆかわat 10 :10 | ビジネス | コメント(0 )