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2009 年7 月19 日

迷惑施設設置における周辺住民の意向との調和〜自治体法務合同研究会

18・19日と、全国の自治体職員の有志でつくる自治体合同法務研究会に出席してきた。

千葉実氏(岩手県)の「産業廃棄物処理施設設置における周辺住民の安心度の向上と設置手続」の分科会に出席した。

産業廃棄物処理施設設置手続には生活環境影響報告書の縦覧、意見書の提出手続があり、許可要件として「生活環境への適正配慮」がある。氏の報告は、それを手がかりとして、事業者と周辺住民との利害調整を施設設置前に完了させるシステムを構築しようとするものだ。これは、施設が出来てから事後的に紛争解決のための訴訟や調停を行うよりも、設置前に利害調整を完了しようとするもので、周辺住民にとっても事業者にとってもメリットがあると思われる。事後的に民事調停をして苦労した経験(事業者としては許可を得て施設を設置してしまえば、調停に応じる必要も義務もないから、まともに取り合ってくれない)からすると、行政がこのような利害調整の場を制度として用意してくれるのは大変ありがたい。行政型ADRとして真剣に実現を目指したいシステムだ。司法・裁判所にとっても、それで利害調整が完了しない事案だけを訴訟として引き受ければよいから、司法的紛争解決のコスト低減にも資するだろう。

なお、細かいところでは少し気になるところもあった。
利害調整の場として公聴会の対審化を図る氏の立場からは、「公聴会の終了要件」という概念が出てくるが、これは理解しづらい。一定の議論が出尽くして、それ以上の議論の深まりが期待できなくなったとき、要するに平行線になったときが終了の時期と考えるしかないだろう。
また、周辺住民の保護法益として、「平穏生活権」=不安がないという心理状態で平穏な生活を送ることのできる権利という概念が出てくるが、いくら身体権に近いものとして考えられるとしても、理解しにくい。「客観的に飲用に適した水であっても通常人の感覚から飲用に供するのを適当としない場合は平穏な生活を営む権利を害する」というのは、たとえそのような言い回しをしている判例があるとしても、それを言葉通りに受け止めるのはいかがなものか。嫌忌施設といっても、暴力団事務所とはやはり質的に違うと思われる。ただ、そのような感じ方をする住民がいるということを事業者に理解してもらう必要はあるだろうが。

投稿者:ゆかわat 22 :03 | ビジネス | コメント(1 )

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