2015 年12 月8 日
日本版「国家資本主義」でいいのか
本日の日経朝刊「大機小機」から。「官民協調といえば聞こえは良いが、これでは日本版「国家資本主義」である。賃上げだけかと思えば、設備投資の積み上げまで求められる。なかには値下げを要求されるところもある。企業経営の根幹を政府に握られるようなものだ。
政府が開いた官民対話は市場経済のもとにあるこの国では信じがたい光景だった。経団連の榊原定征会長は設備投資を3年間で10兆円増やし、来年は今年を上回る賃上げを期待すると表明した。安倍晋三政権の強い要請に抗しきれなかった。これを受けて、政府は法人税の実効税率を20%台にする方針を打ち出した。政府の「強制」による官民協調は、戦前の大政翼賛会や産業報国会を思わせる。
デフレ脱却のために賃上げを実現し、経済の好循環につなげようという試みはわかる。横並び主義の日本の企業社会では「逆所得政策」の採用は避けられない選択だったといえる。
しかし、個別企業の投資判断にまで政府が介入するのは筋違いだ。経団連会長が民間企業の設備投資の見直しを政府に約束できるのか。経営者は需要やコストを綿密に分析し、企業の将来をかけて投資を判断する。判断を誤れば企業の存続に響き責任を問われる。経団連会長が各企業の責任を担えるわけではない。(略)
大事なのはグローバル戦略だ。「一億総活躍社会」はナショナリズムの色合いが濃い。外資導入や外国人の採用を積極化すべきだ。(略)
政府が企業の活力をそぐ介入を続けるようでは、国家資本主義の本場である中国に、改革を求められなくなる。」
最近の日本政治は、日本版「国家資本主義」ではなく、日本版「社会主義」であろう。日本版社会主義では、政府・官僚は、思い付きの価値判断を国民に押し付け、失敗しても何の責任もとらない。国民に対して責任をとらないから、民主主義ではない。国民の自由を尊重しないから、自由主義でもない。