2016 年5 月7 日
奈良・無許可掘削 土砂採取会社社長を逮捕
毎日新聞http://mainichi.jp/articles/20160507/k00/00e/040/215000c
によると、「奈良市月ケ瀬長引の山林が無許可で掘削された問題で、奈良県警は7日、三重県伊賀市の土砂採取会社「三進商事」の社長、福本冨士男容疑者(73)=同市長田=を奈良県砂防指定地管理条例違反と森林法違反の両容疑で逮捕した。法人としての同社も同容疑で送検する方針。
逮捕容疑は2010年6月に山林約9660平方メートルで土砂採取などを行うとして県から許可を取得したが、13年10月までの間、許可区域外の約8100平方メートルで約4万4000立方メートルの土砂を掘削したなどとされる。容疑を認めているという。
現場は京都府南山城村との県境。県警によると、本来は階段状に掘るべきところを、茶畑の近くまで垂直に近い崖状になるまで掘削し、崩落の危険があるという。同社名義の土地以外に第三者の所有地も違法に掘削した疑いがある。県警が土砂の処分先を調べている。
県は13年以降十数回にわたり行政指導し、14年6月に是正を命令したが原状回復が進まず、県が今年3月に同社を同条例違反容疑などで告発していた。」という。
被疑事件名は砂防指定地管理条例違反とされている。本来は砂防法違反となるべきところだが、砂防法4条により都道府県知事は砂防地において一定の行為を禁止制限することができることとされているが、砂防法施行規程3条により、その禁止制限は都道府県条例で定めることとなっていることを受けて、砂防指定地管理条例が定められている。
報道写真で見る限り、業者による違法土砂掘削は随分と広範囲にわたっているが、これほどにまでにならないと、砂防指定地管理条例違反で立件できる程度の可罰的違法性がないということであろうか。
私自身同種の事件を担当したことがあるが、そもそも砂防指定地かどうかが明確でない場合が多い。砂防指定地の地図がなかったり、現地にも砂防指定地の公示が適切になされていない。
また、本件の場合は、業者が砂防指定地内で土砂を掘削していた(砂利採取法違反にも当たる場合が多いだろう)が、土地所有者が業者に土砂の掘削・埋立を請け負わせる場合は行為主体が業者なのか所有者・発注者であるのか、区別がつかない場合も多い。
さらに、原状回復命令がなされた場合、業者等が複数にわたるときは、最後の(摘発された)業者の原状回復責任の範囲がどこまでなのかも、問題となろう。