2017 年10 月12 日
平成19年司法試験論文式試験問題憲法
ロースクールの公法系の演習の授業で、平成19年司法試験憲法問題を毎年取り上げている。オウム真理教事件を参考に出題されたのだと思われるが、ごく単純化すると、ある宗教団体が施設を建設しようとしたところ、その所在地の市がまちづくり条例に基づいてその施設の開発を不許可にしたという事案だ。宗教団体は信教の自由の侵害だと主張するし、市は信教の自由を侵害する意図は毛頭なく、まちづくり条例に基づき、市民の意思を尊重して開発不許可処分をしただけだと主張する。まちづくり条例が都市計画法に違反していないか、財産権の侵害をしていないか、他方、そのようなまちづくり条例であっても信教の自由を侵害しているときは憲法違反となるのではないかということを論じればいい問題だとこれまで思っていた。
私は行政法の立場で授業を拝聴しているだけなのだが、ふと、今日はじめて疑問に感じたことがある。仮にこの市の処分が信教の自由を侵害して憲法違反だということになったとき、行政法の立場からはどう考えればいいのだろうか。
信教の自由を侵害して憲法違反だということになると、市としては宗教団体の信教の自由を侵害することがないかを配慮しなければならないということになる。しかし、まちづくり条例の運用にあたり、その適用対象が宗教団体かどうかを配慮する、さらに言えば、適用対象が宗教団体にあたる場合には条例の解釈運用にあたって宗教団体の信教の自由を侵害することの無いように配慮しなければならないということは、本来、まちづくり条例とは関係のないことだし、条例と関係のないことを考慮して条例を運用する(極論すれば、相手方が宗教団体の場合は匙加減を加えろ)というのは、条例にない要件を加味するということで、他事考慮にあたって違法ではないか。
しかし、条例の運用にあたり、条例に書いてなくても、憲法上の自由・権利に配慮するのは、憲法の下における法令解釈としては当然のことだ。行政法だけの頭でっかち(憲法無視の制定法準拠主義)になると、こんな本末転倒の思考となってしまうのだなと、改めて反省した。
しかし、こういう事例は、実際には多数あるのではないだろうか。