2018 年8 月3 日
廃家電処理で是正勧告 アーク引越センター
7月31日、経産省と環境省が引越の際に不要となったエアコンなどの廃家電を違法に処理業者に引き渡していたとして家電リサイクル法16条1項に基づき是正勧告がされたことが新聞報道されていた(日経新聞夕刊)。経産省のホームページによると、家電リサイクル法上の小売業者に該当するアーク引越センター株式会社に対して、経済産業省本省が聴き取り調査を行ったところ、排出者から引き取った廃家電の一部が、製造業者等以外の者(産業廃棄物処理業者やいわゆる不用品回収業者)に引き渡されていたおそれがあることが認められたので、平成30年7月4日、経済産業省及び環境省においてアーク引越センター株式会社に対し、家電リサイクル法第52条に基づき報告を求めたところ、同月13日、全13支店(物流センターを含む。)で、製造業者等以外の者に逆有償又は無償による引渡しが行われたとの報告を受けたとある。
本件で問題とされているのは、小売業者の「引渡義務」違反である。
小売業者の引渡義務とは、「小売業者は、特定家庭用機器廃棄物を引き取ったときは、自ら当該特定家庭用機器廃棄物を特定家庭用機器として再度使用する場合その他の主務省令で定める場合を除き、第十七条の規定により当該特定家庭用機器廃棄物を引き取るべき製造業者等(当該製造業者等が存しないとき、又は当該製造業者等を確知することができないときは、第三十二条第一項に規定する指定法人)に当該特定家庭用機器廃棄物を引き渡さなければならない。」(家電リサイクル法10条)というものである。
しかし、家電リサイクル法でいう「小売業者」とは「特定家庭用機器の小売販売を業として行う者」(5条1項)をいうところ、アークはこのような小売業者にはあたらないのではないか。
また、家電リサイクル法52条の報告徴収の対象は「小売業者又は製造業者等」に限られているところ、「製造業者等」とは「特定家庭用機器の製造等を業として行う者」(4条)をいうから、アークは報告徴収の対象とはならないのではないか。
さらに難しいのは、引越の際に発生する不要エアコンが「廃家電」にあたるのかである。家電リサイクル法の対象となるのは、廃棄物処理法の廃棄物となった家電である。廃棄物処理法の廃棄物とは「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの」(2条1項)をいう。「不要物」というのがまた難解で、消費者がもう不要だ、引越し先で新しいものに買い替えようと思ったら「廃棄物」かというと、そうではない。消費者(排出者)の主観だけで判断するのではなく、有価物=有償で取引できるかどうかも勘案して判断される。廃棄物とは「占有者が自ら利用し、又は他人に有償で売却することができないために不要になった物」とされ、これに該当するかどうかは「その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する」ものとされているところだ。そうすると、引越しの際のエアコンなどの不要物も「廃棄物」「廃家電」には当たらない可能性があるのではないか。
今回の是正勧告は、引越業界者を規制するために、政策的にむりくり有力企業を是正勧告の枠組みの中に取り込んだのではないかという疑念がぬぐえない。