2018 年12 月22 日
ゴーン元会長勾留延長許可
12月20日、東京地裁はゴーン日産元会長の勾留延長請求を却下した。「特捜事件で異例の判断」と新聞記事で報道されているが、勾留延長が簡単に認められること(さらにはそれが当たり前のように受け止められていること)自体が世界の常識からみて「異例」なのだ。検察は大いに反省すべきだ。本件は、8年分の有価証券報告書の虚偽記載を5年分と直近の3年分の2回に分けて逮捕勾留しており、捜査内容はいずれもほぼ変わらなかったこと、逮捕前に検察は客観的な証拠を入手しておりこれ以上証拠隠滅のおそれも低いこと、すでに30日も身柄拘束を継続していること、が考慮されたものだ。勾留延長却下はまさに当然の判断で、そもそも2回目の勾留自体認められるべきではなかったというべきだろう。今後はこのような裁判所の判断が当たり前となることを期待する。
実は、このような2度の逮捕勾留を利用した捜査手法は日本の刑事司法で一般化しており、検察も裁判所も、そして弁護士自身が当然のごとく受け止めている。しかし、やはりこのような安易な長期身柄拘束を利用した捜査手法が冤罪の温床となっていることに思い至すべきである。
私自身、現在、石川県で、逮捕前にあらかた客観的証拠を入手していた2件の自動車窃盗事件を警察・検察が2度に分けて逮捕勾留を繰り返し、結局、40日間の身柄拘束後、不起訴処分した事件につき、石川県(警察)と国(検事・裁判官)を相手に違法逮捕勾留を理由として国家賠償請求訴訟を担当している。
この事件では、弁護人(弁護人は私ではなかった)の勾留延長に対する準抗告を裁判所が却下していたが、その判断が誤りであったことは、今回のゴーン事件からも明らかだろう。
しかも、この事件では、2度目の逮捕勾留は年末であり(ゴーン事件と同じ)、被疑者は年末年始を留置場で過ごさせられたばかりか、これが、自白しないことの見せしめであったことは、2度目の逮捕勾留で実質的な捜査が何も行われていなかったことからも明らかであった。
裁判所がこの事件の身柄拘束を利用した捜査手法を違法と判じてくれることを期待している。