2021 年9 月27 日
一般廃棄物処理審議会
とある地方都市で、人口減少と少子高齢化の流れの中でこれからは従来通り委託方式でし尿処理業務(し尿処理は行政の直営・委託制・許可制の3方式があるところ、当地域では委託制で処理していた。)を継続することに支障があるために、し尿処理業務の許可制への移行と浄化槽汚泥処理業務の許可の区域割廃止(許可制の下で業者に営業区域を指定して区域独占を認める方式と区域割をせず業者の競争に委ねる方式があるところ、当地域では区域割をしていた。)を諮る審議会の委員に選任された。大学で環境法を教えていることと、一般廃棄物処理業許可取消の原告適格の判例変更をした平成26年1月28日最高裁判決の代理人であったことから、法律面での知見があると考えられたことによるものだ。わが師と(勝手に)仰ぐ阿部泰隆先生に言わせると、審議会など御用審議会で行政に悪用されるだけだから撤退すべきものだが、言いたいことは言わせていただいた。
今日、ほぼ1年間の審議を経て、許可制移行と区域割撤廃を企図する行政とそれに反対する業者の双方に花を持たせる答申となった。要旨、将来的には許可制移行と区域割撤廃をするのを是とするが、そのためにはまず委託制の改善と区域割の再編を行い、そのうえで業者の経営基盤への影響への配慮と信頼・協力関係の構築を旨として、行政と業者との十分な協議を行うこととするものだ。制度の趣旨を踏まえて十分協議することを許可制移行と区域割撤廃の条件とするものと理解してよい。よく読めば読むほどよくできた答申だ。委員長の努力をたたえたい。
双方に花を持たせたというのは聞こえがいいが、実は体よく問題の先送りをしただけかもしれない。「協議」というのは、言葉はきれいだが、実は非常に難しい。日本は民主国家だが、議会を見れば明らかなとおり、実は話し合い・協議による解決の作法が全く身についていない。行政としては協議の場を持てば協議をしたことになるとの認識だし、業者としては業者が納得する結論が出ないのであれば協議をしたことにならないとの認識だからだ。これでは協議ができない。そもそもちゃんと協議できるくらいなら、問題がこじれることもない。離婚の相談に来た夫婦によく話し合えと助言するのと同じことだ。よく話し合うことができるくらいなら離婚にまで話がこじれるはずがない。双方同じ方向を向いて腹を割った調整ができるかがポイントだ。ちゃんとしたメディエーター・調停者を置いて協議の方向を示すことが必要な場合もあろう。すべてはこれからだ。御用審議会からは一歩踏み出したのではないだろうか。
地方ではこれからも多発する問題だろう。何かの参考になれば幸いである。