2005 年10 月14 日
住基ネット合憲判決
今日の夕刊に、福岡地裁で、住基ネット合憲判決が出たと報道されていた。住基ネット。住民基本台帳ネットワーク、略して、「じゅうきネット」。最初は、自治体行政法に詳しいと自称している私でも、「じゅうきねっと」と聞いて、ミシンメーカーのジュウキを連想していた。「住基」を頭に思い起こすのに時間がかかったものだ。
住民基本台帳法に基づき、市町村は住民に関する記録を管理し、住民基本台帳を整備することになっている。ちなみに、今、プライバシー保護、業者のDM対策、ストーカー対策の観点から問題になっている住民基本台帳の閲覧制限も、この住民基本台帳法に関係する。住民基本台帳法に基づく事務は、地方自治法上の自治事務にあたり、市町村が地域の特性に応じて処理できるよう国から特に配慮を求められている。
住基ネットは、住民に関する記録をコンピューターで管理し、それを全国の自治体が専用回線で共有するシステムだ。制度導入の目的は行政事務の効率化にあるが、反対する人々はプライバシー侵害の危険を訴える。
これまで、金沢地裁で住基ネット違憲判決が出、その翌日、名古屋地裁で合憲判決が出、今日、福岡地裁で改めて合憲判決が出た。新聞の要約によると、「行政サービス向上、効率化のために住基ネットは必要で、本人確認情報の利用の仕方なども一般的に許容される範囲内で合憲」と結論づけたという。
それはそれで一つの解釈なので、特段私がコメントすることもない。
ここで取り上げたいのは、福岡県総務部長のコメントだ。「県の主張が認められた妥当な判決と考えている。今後も住基ネットの適切な運用に努める。」とのコメントだが、住基ネット制度を考案したのは福岡県ではなく、国である。県にしてみれば、国から押しつけられた制度だ。住基で情報を管理されるのは住民であり、その住民の一部からであっても、住基ネットにプライバシー侵害のおそれがあるとして反対の声が上がっている。それなのに、県が住民の声を全く無視し、国の言いなりの主張をしてそれが「県の主張」であると言う。「県」とは誰なのか。
平成12年4月に地方分権一括法が施行され、国と県と市町村とは対等の関係になった。地方分権の一層の進展が求められており、それを私などは、呼ばれて政策法務研修を行っている。これから進展されるべき地方分権とは、住民自治だ。すなわち、国と県と市町村が対等になったこれからは、県・市町村の主役に住民がなるということだ。それなのに、住民の声を無視して、国の言いなりの主張をして、それを「県の主張」と呼んで憚らない県の総務部長がいるのは、地方分権の何たるかを理解しない嘆かわしい事態だ。所詮、日本の地方分権とはその程度のもの、中央政府と地方政府の権限争いにすぎないのかもしれない。
投稿者:ゆかわat 23 :59| ビジネス | コメント(0 )