障害者自立支援法に関する質問から
最近受けた法律相談で次のようなものがあった。
今まで通っていた病院は遠いので近くにある病院で診察を受けたいと福祉事務所に相談してその病院に行って、医師に対して「障害自社自立支援法の枠内で診療をお願いします」と伝えたところ、医師は「後で受付で相談して」と言っていろいろ検査をしたが、支払の段階になって「医師に確認したところ、全額自費だと言われた」ということで医療費の国保の自己負担分の請求がなされた。障害者自立支援法の枠内で診療がなされるかどうかは病院や医師によって変わるのは分かっているが、医師に相談した段階で自費になるかもしれないと言われていたら、そこで診療を受けることもなかったのに、医師の対応は問題ではないか。
乳児医療などの例からすると、行政から認定を受けた者は全ての診療行為につき月額上限負担額が決まっており、上限負担額を超えた部分は全額行政が負担するというものだから、障害者自立支援法の枠組もそういうものかと思ったが、ご本人は、医師の判断に委ねられているのだという。
しかし、法律を見ると次のようになっている。
障害者自立支援法
5条18項「自立支援医療」とは、障害者等につき、その心身の障害の状態の軽減を図り、自立した日常生活又は社会生活を営むために必要な医療であって政令で定めるものをいう。
その政令である障害者自立支援法施行令によると
(自立支援医療の種類)
第一条 障害者自立支援法 (以下「法」という。)第五条第十八項 の政令で定める医療は、次に掲げるものとする。
一 障害児のうち厚生労働省令で定める身体障害のある者の健全な育成を図るため、当該障害児に対し行われる生活の能力を得るために必要な医療(以下「育成医療」という。)
二 身体障害者福祉法 (昭和二十四年法律第二百八十三号)第四条 に規定する身体障害者のうち厚生労働省令で定める身体障害のある者の自立と社会経済活動への参加の促進を図るため、当該身体障害者に対し行われるその更生のために必要な医療(第四十一条において「更生医療」という。)
三 精神障害の適正な医療の普及を図るため、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 (昭和二十五年法律第百二十三号)第五条 に規定する精神障害者(附則第三条において「精神障害者」という。)のうち厚生労働省令で定める精神障害のある者に対し、当該精神障害者が病院又は診療所へ入院することなく行われる精神障害の医療(以下「精神通院医療」という。)
となっているので、支給認定を受けた障害者はすべての医療費が支給されるわけではなく、育成医療や更生医療や精神通院医療に限られているようだ。しかし、自立支援医療費が支給される医療に該当するかどうかは、医師に判定を委ねるという規定でもない限り、医師が個別に判断するのではなく、市町村等が判断するのが普通だ。しかも、相談者が福祉事務所に相談して医療機関を今までの医療機関から別に指定されたのだから、そこで受ける診療行為について自立支援医療費が支給されるのは当然だと思われる。
百歩譲って、医師が個別に認定するとしても、相談者の話によれば、相談者が自費で負担することを申し出て診療を受けるはずもなく、現に医師に相談して確認を得て検査等を受けたというのであり、医師が後になって全額自費となることを相談者が承認したというのは明らかに不自然であり、相談者の供述内容が真実だと思われた。
投稿者:ゆかわat 22 :10| ビジネス | コメント(0 )