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2012 年02 月04 日

無許可業者に依頼の管財人告発違法

2月2日の日経新聞に、破産管財人として産業廃棄物の無許可業者に廃タイル処理を依頼したとして岐阜県から告発された弁護士が、告発は違法だとして損害賠償を求めた訴訟の判決で、岐阜地裁は1日、県に300万円の支払を命じたとの記事が載っていた。

破産したタイル製造会社の破産管財人として廃タイルの処理を無許可業者に委託したことが廃棄物処理法の委託基準違反であるとして刑事告発したところ、地検が破産管財人は事業者にあたらないとして不起訴処分したことを受けての地裁判決である。

 確かに廃棄物処理法は、「事業者は」と定めているから、「事業者」が委託基準の規範の名宛人であることは違いない。しかし、他方で、法は「産業廃棄物」とは「事業活動に伴つて生じた廃棄物」と定めているから、タイル製造会社がその事業活動によって生じた廃タイルを保管していたのであれば、その廃タイルが「産業廃棄物」に当たることは疑いがない。それでは、その産業廃棄物を事業者ではない者が処理するときは、無許可業者に処理を委託しても許されるのであろうか。
 そもそも破産管財人が破産者とは離れて独自の立場で(要するに第三者として)廃棄物の処理をするものではあるまい。
 法人の破産管財人の」法的地位について、法人の代表者にあたるのか、特別の機関にあたるのか争いがあるが、いずれにしても破産管財人は法人のために、法人に効果を帰属させる意思をもって廃棄物の処理をするのであるから、破産管財人が特別の機関にあたるとしても「代理人」にあたるのではないか。
 また、破産管財人の権限は「破産財団に属する財産の管理及び処分をする」権限しか有していないから、破産管財人が破産管財人として破産者の資産ではない廃棄物の処理する権限があるのか疑問があるし、もし破産管財人として権限がないということになれば、破産管財人は破産者の代理人として廃棄物の処理をしたことになろう。
 要するに、破産管財人自身が「事業者」ではないとしても、破産管財人は「事業者」の「代表者」または「代理人」として産業廃棄物の処理を第三者に委託するのであるから、破産管財人は「事業者」の「代表者」または「代理人」として、両罰規定(廃棄物処理法32条)の対象となるのではないか。

 ちなみに、「廃棄物管理の実務」のホームページhttp://www.ace-compliance.com/blog/で尾上雅典行政書士は、破産管財人も最後まで適正に処理する責任を持った事業者であるという意味で排出事業者にあたるとする。

 そうすると、地検が告発を不起訴処分したとしても、それが廃棄物処理法の解釈として正しいとは限らないし、岐阜県の告発が法の解釈として明らかに誤っているものではないから、少なくとも県職員に職務上の注意義務違反があったとまではいえないのではなかっただろうか。

もっとも、現実問題として破産管財人の業務の一環として廃棄物の処理をしなければならないときに、大多数の弁護士にとって専門外の廃棄物処理法違反を理由に刑事告発をされたりするのはとても職務の遂行に支障を生じさせるものだ。そんな運用をされると、それでなくても廃棄物処理がらみの管財事件の引き受け手が少ないのが一層いなくなってしまいかねない。公務員個人が国賠法による民事責任から免責されているのと同様、破産管財人も民事上刑事上の責任から免責されるのがよいと思うのだが。

投稿者:ゆかわat 09 :31| ビジネス | コメント(0 )

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