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2012 年02 月04 日

不親切な大阪地裁とそれを是認する不親切な判例評釈

判例地方自治348号を読んでいたら、次のような判決が紹介されていた。

大阪地裁平成23年3月17日判決(吉田徹裁判長)

  この事件は、原告が大阪市を被告として生活保護法の保護として家具什器費の支給を却下する処分がなされたとして当該処分の取消しと支給の義務付けを求めたところ、原告の家具什器費の支給に係る申請意思が客観的に明らかにされていたとはいえないとして、本案判断をすることなく、訴えを却下した。

 生活保護申請は、規則・細則では書面によることと定められているが、憲法25条の趣旨に照らして口頭による申請を排除する趣旨ではないとされている。本判決も結論として口頭による申請を排除するものではない。 しかし、申請意思が客観的に明らかになっていなければいけないという。
 その上で、本判決は、原告が2度にわたって福祉センターを訪れて家具什器費の支給を受けたいと申し出ており、2度目には医師の診断書まで持参してその旨申し出ているのに、担当職員が支給要件を満たさないとの説明を受けた後に重ねて支給の希望を伝えたり必要な手続について確認したりすることはなかったから、家具什器費の支給申請意思が客観的に明らかにされていたとはいえないとして、保護申請の事実が認められないと判断したのである。

 しかし、担当者から1度要件を満たさないと言われて、2度目に医師の診断書まで持ってきて支給の希望を伝えていれば、それで申請の意思は明らかではないか。
 ましてや、判決文からすると、原告は、障害等級を1級とする精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていたり、障害者自立支援法に基づく障害福祉サービスの支給決定を受けていたというのであるから、精神障害を持っていた方なのであろう。私ですら、担当者から2度ダメだと言われたらそれで諦めてしまうのが普通なのに、精神障害を負っている原告に対してそれ以上の強い意思を求め、それを伝えなければ、そもそも申請したとすら認めないというのは、不親切というのを通り越して、それ自体が障害者の人権無視ではないか。

 しかも、当該事案では、大阪市の担当者は、原告の代理人的地位にある医師に対して「本来であれば申請書等の指導を行った上で却下すべきところ行政手続を行わず回答したことで迷惑をかけたなどと述べて謝罪し」たというのであり、申請の事実を認めるべき事案であった。
 それに仮に申請の事実がその時点では認められないとしても、家具什器費の支給の義務付けを求めて訴訟まで提起してきているのであるから、少なくとも現時点では申請の意思が明らかであった。しかも、原告は調理器具等を所持しておらず、でもホームヘルパーの居宅介護を受けることができるようになったというのであるから、障害者自立支援の趣旨でも支給決定の本案判決をすべきであったと思われる。

 大阪地裁行政部の人権感覚を疑うばかりだ。
 それに加えて、判例地方自治の当該判決の概要紹介でも、「本判決の認定した事実を前提とすれば、(判決の)判断も正当であると思われる。」とコメントして、人権無視の裁判所の擁護をするのだから、この評釈者の人権感覚も疑わざるを得ない。

投稿者:ゆかわat 18 :25| ビジネス | コメント(0 )

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