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2012 年07 月18 日

ジェノサイド

高野和明「ジェノサイド」を読んだ。
去年の夏、ちょうど1年前の自治体合同法務研究会の帰りにたまたま駅の本屋で見つけた時からとても気になっていた本だった。
仕事が終わってから、毎日11時過ぎから読み始めたが、本当に寝不足になるほどのめりこんでしまう本だった。久しぶりの感動だ。

ジェノサイド=大量虐殺という表題に示されるように、PG12映画のような凄惨なシーン、人間の残虐さをこれでもかというほど突きつけてくる半面、とても一途な利他的な優しさ、亡き父の足跡を偶然にたどり結局は父親と同じ人生を歩むとともに父への尊敬を取り戻す青年、人類史や薬学やITなど様々な知識、西洋活劇のようなきわめてスリリングで早い展開、はてはバミューダトライアングルの謎解きなど、これほどまでに博学で、また繊細な描写は見たことがないというほどの本だった。何よりも、これが日本人作家の作品とは思えないほど、西洋的な感覚にひたされた小説だ。ジェノサイドで始まったのに、ジェノサイドがいたるところで繰り広げられているのに、最後読み終わる頃にはとてもあたたかい心で満たされていた。いずれ新生人類に滅ぼされることになる現生人類として安らかな最期を迎える心境になった。

最後に、文中の1フレーズ。
「人間は、自分も異人種も同じ生物種であると認識することができない。肌の色や国籍、宗教、場合によっては地域社会や家族といった狭い分類の中に身を置いて、それこそが自分であると認識する。他の集団に属している個体は、警戒しなければならない別種の存在なのだ。もちろんこれは、理性による判断ではなく生物学的な習性だ。ヒトという動物の脳が、生まれながらにして異質な存在を見分け、警戒するようになっているのさ。そして私には、これこそが人間の残虐性を物語る証左に思える」
これはまさにいつまでもなくなることのない、学校でくりかえされるいじめ自殺問題に対する解なのだろう。

投稿者:ゆかわat 22 :44| 日記 | コメント(0 )

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