2012 年07 月24 日
建築基準法違反と売買の瑕疵・債務不履行
東京地裁平成23.6.1(判例時報2148号69頁)は、店舗として購入した建物の一部が駐車場として建築確認を受けたものであって容積率違反があるが、すでに建築から売買まで19年以上の時間が経過しており、その間3回行政指導が行われただけであるから今後建築基準法所定の是正措置命令が出される具体的可能性もなく、客観的にみて店舗として使用し得ない状況にないから、建築基準法違反を売主及び不動産媒介業者が見落としていたとしても債務不履行にはあたらないとした事例である。 建築基準法という行政法規の違反と民事上の契約の瑕疵・債務不履行との関係は難しい問題がある。 この判決は、?売買契約書には建築基準法違反の点を看過することなく売却すべき債務を定めた明文の規定はなく、建築してから売買契約を締結するまでに19年間を経過しており建築基準法違反の事実を把握できていないから建築基準法違反の点を看過することなく売却すべき義務を契約解釈又は信義則によって負っていたと解することもできず、?売買契約に瑕疵担保責任免除特約が設けられている趣旨からも困難であるとする。そればかりか、?建築されてから今日まで25年間において容積率違反を理由とする行政指導が3回行われただけで違反是正措置命令もされずに放置されてきたのだから、今後違反是正措置命令がされて店舗としての使用が不可能になるとは考えがたいから、客観的に見て売買契約の目的が達成できない状況にあるとは認められないから債務不履行はないとする。 とても分かりやすい。私も同じような事案を担当した。しかし、そう簡単な問題ではない。 ?建築基準法違反の建物をその旨告知して納得の上で売買するのであればいざ知らず、建築基準法違反であることを告知せずに売ってはならないのは民事上も当然ではないか。少なくとも、建築基準法違反であることを知らずに売ったのであればそれは契約の目的に瑕疵があるということになろうし、宅建業者(媒介業者)にも重要事項説明義務違反があるというべきだろう。 ?瑕疵担保責任免除特約も常に有効とは限らず、売買の内容や瑕疵の内容によっては制限があると言うべきであろう。 ?何よりも、確かに現時点では是正措置命令がされておらず使用に支障がないとしても、建築確認の時点(正確には建築工事完了検査時)で容積率違反がある以上それは違法である(建築時の建築基準関係規定には適合していたが、その後の法改正により現時点の建築基準関係規定には違反する既存不適格ではなく)。そして、建築基準法9条では行政代執行法2条のように違反を放置することが著しく公益に反するという要件も課せられていない以上、今まで行政指導しかされてなくても、今後とも是正措置命令がなされないという保証はない(今までなされていないのだから今後是正措置命令を発令することが行政上の信義則に反するとか、信頼原則に反するとか、比例原則に反するとか言うことはできないだろう。)。そのときに、この判決のように、そのような使用状態を使用が不可能ではないと簡単に評価できるかどうかは微妙である。投稿者:ゆかわat 23 :32| ビジネス | コメント(0 )