2012 年10 月31 日
北九州市 きしむ「暴排」
日経新聞の今朝の社会面に、「北九州市の繁華街の雑居ビルに入居する飲食店20店の約7割が暴力団立入禁止の標章を掲げていたが、10月中旬までに全店が外した。」との記事が載っていた。標章の掲示は福岡県の改正暴力団排除条例に基づき、県内の繁華街の飲食店などを対象に8月から始まったが、標章を外す店が増えているのは、標章を掲げている飲食店経営者を狙った傷害事件がいまだに未検挙のため、標章を掲げたままでは次は自分が刺されるかもしれないと思ってのことのようだ。標章を外したいと思うのは当然のことなのに、新聞記事では、飲食店組合の役員が県警に標章を外したいと相談しても県警はそれに応じなかったという。おらおく、県警が応じなかったのは、暴排条例に標章の掲示の申出の条項はあっても取外しの申出の条項が定められていないからだろう。
この事件は、暴排条例の骨抜きを図る暴力団の抵抗という視点で見るよりも、暴排条例というビジネスモデル(ここでビジネスモデルという言葉を使うのはあまり適切ではないかもしれないが)の破綻という視点で見るべきではないか。
というのも、暴排条例は、警察が音頭をとって全国の都道府県に暴排条例を制定させ、国民・事業者に暴力団排除の義務を負わせるものだが、これは警察(国)の暴力団規制政策のために国民をいわば強制的に動員するというビジネスモデルだった。条例づくりの視点から見るときわめて高度な内容を含むものであった。それは警察対暴力団という図式から社会対暴力団という図式に引き直して暴力団規制の強化を行おうとした警察政策であった。しかし、実は実態を無視した机上の空論にすぎず、かえって市民を危険にさらして市民社会の安全と秩序を危機に追いやっているのではないか。
投稿者:ゆかわat 19 :28| ビジネス | コメント(0 )