2005 年12 月28 日
京都大学任期制教員再任拒否事件
京都大学再生医科学研究所に任期制教官として昇任した井上教授が5年後の再任時期に再任拒否された。在任中の業績を不当に低く貶められ、「医の倫理問題」なる虚構をでっち上げられて、それを理由に再任拒否された。そこで、京都地裁に教授の地位の確認訴訟と再任拒否処分の取消訴訟の2件を提起した。ところが、昨年3月31日、京都地裁八木コートは、両事件とも井上教授を敗訴とした。同事件は、大阪高裁に控訴された。控訴審から私も代理人の一員として加わることになった。そのうちの再任拒否処分取消請求事件の高裁判決が今日言い渡された。
争点は、再任拒否処分のいわゆる処分性だ。要するに、再任拒否が行政事件訴訟法に言う取消訴訟の対象となるかどうか。
従来、処分性は、法律が当該行政作用につき国民の権利義務関係を一方的に形成変更するものとしているかという形式的な物差しで判断されていた。ところが、最近は、当該行政作用のもたらす事実上の効果、当該行政作用の根拠となる法律の趣旨、さらには当該行政作用の運用実態や、救済の必要性といった様々な観点から、取消訴訟の対象とするのが望ましいものは処分性があるとするのが最高裁判例の傾向だ。
そこからすると、当然、高裁判決では処分性が認められるものと思っていた。
ところが、あにはからんや、地裁判決の上塗りで、最高裁判例はおろか、高裁での審理の結果は全く反映されない敗訴判決だった。大学教員の任期を定める法律に基づく任期制の構造、その運用実態、京都大学での学則の定め、さらには再生研での運用実態を詳細に主張し、立証してきたのに、一切考慮されない判決だった。
申し訳ないが、高裁の裁判官は最高裁判例の動きをフォローもしていなければ、行政事件訴訟法が改正された経緯も理解していないし、そもそも行政訴訟法をかじったこともないとしか思えない不当判決だった。
判決文
http://www.nsknet.or.jp/~yukawa/mypage46.htm
事件の内容
http://www.nsknet.or.jp/~yukawa/mypage47.htm
投稿者:ゆかわat 23 :48| ビジネス | コメント(0 ) | トラックバック(0 )