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2013 年03 月26 日

衆議院議員選挙無効判決

 連日、高裁で選挙無効判決が言い渡されている。司法が立法の怠慢を批判するのは民主制の下で極めて健全なことだ。
 ところで、選挙無効の裁判所の論理はやや奇妙な感じがする。
 たとえば、広島高裁判決。
 判決主文は広島1区、2区の選挙を無効とした。
 その理由は、広島1区、2区の選挙区の選挙において投票価値の平等が侵害されていたからではない。1人別枠方式とこれを前提とする区割りという選挙制度の枠組み自体が憲法違反だからというのだ。現実に投票価値の平等が侵害されて投票価値が半分以下になったのは、当該広島の選挙区ではない。それなのに、広島の選挙民が選挙して当選した議員の選挙が無効となるのは、奇異と言わざるを得ない。

 しかも、投票価値が侵害されているという理由で、選挙が無効となるのは、さらにその投票権を侵害することにならないか。これはたとえば、女性の退職金を男性のそれの半分と定める退職金規程を不合理な男女差別だとして訴えたら、確かにその通りだということで当該退職金規程を無効とするのと同じではないか。その結果、確かに憲法違反は是正されるが、その退職女性は退職金を1円ももらえないことになる。
 どこが間違っているのかというと、憲法違反の是正方法だ。この場合に必要な不平等の是正方法は、退職金規程を無効とすることではなく、女性の退職金額を男性と同額とすることだ。
 そこでは、退職金規程を憲法の規定に照らして書き換えている。
 同じように選挙無効事件でも、選挙を無効とするのではなく、次点の得票者を当選人とするとかできないのだろうか。
 さらにいえば、選挙制度が憲法違反だから選挙無効とするのではなく、裁判所が選挙制度を憲法の理念に従って書き換えてしまうということができないのだろうか。
 こんなことを言うと、憲法の三権分立の原理に反するとかいう批判がすぐに聞こえてきそうだが、三権分立の原理というのもそんなに固定的でドグマ的なものではないし、日本とアメリカとイギリスとを比較しただけでも全く三者三様の三権分立があるように国と歴史によって違ってくるものだ。
 日本の場合、裁判所が選挙制度が憲法違反だと言ったところで、何時まで経っても選挙制度は改正されないし、そもそも国会議員に選挙制度を改正させるのは、泥棒に刑法と刑事訴訟法を改正させるようなものではないのか。少なくとも、民主制の過程を正常化するためには、裁判所が無効というだけでは足りず、憲法の理念に沿ってどのような点を改正すべきかを示すとか、あるいはモデル改正案を提示し、一定の期限(それこそ広島高裁がいうように1年間とか)内に国会で改正案が定められない場合は裁判所の示した改正案の通りに改正しなければならないとか、三権分立論者にも配慮した柔軟な違憲立法審査権の行使の在り方が考えられるのではないだろうか。

 

投稿者:ゆかわat 23 :15| ビジネス | コメント(0 )

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