2013 年04 月14 日
花粉症国家賠償
花粉症は公害病であるとして国に対して国家賠償請求をすべきだという意見を述べるブログ記事もよく目にするし、現に国を相手に国家賠償請求訴訟を提起された弁護士もおられるようだ。「花粉症は環境問題である」(奥野修司、文春文庫)という新書も発刊されている。奥野氏は同書の中で、国は戦後、経済的利潤を求めて拡大造林という政策をかかげて国土の広葉樹を杉・檜の針葉樹を植えさせ、その拡大造林のさなかに木材の輸入を自由化して国産杉価格を暴落させて手入れの行き届かない緑の砂漠を国土に広げた。花粉症は国家の犯罪だと述べる。花粉症につき国を相手に国家賠償請求をするときの問題点としては、第一に問題となるのが因果関係の特定だといわれる。杉山弁護士が国家賠償訴訟を提起したとき、国はあなたの花粉症はどこの花粉でそうなったのか特定しろと言われたという。国賠訴訟では誰のどの行為が違法なのかを特定することが求められるのが通常だ。しかし、たとえば、全国的に花粉発生源分布図というのもできてきているようだし、花粉飛散量の予報モデルもできているので、首都圏の花粉症患者であれば丹沢山系とかある程度の特定は可能であろうし、場所的特定はさほどハードルが高いとは思われない。また、因果関係の特定としては、場所を特定しても、その次にそのスギ林を植林したのは国だといえるのかも問題となりそうだ。単に国の植林政策を問題にするだけでは足りず、国(林野庁)が現実にそのスギ林を植林したといえるのかどうかが問題となると思われる。
これらの問題をクリアした後に、第二に問題となるのが国の故意過失だ。国が植林事業を大幅に拡大し始めたのは1950年頃からだが、花粉症が蔓延し始めたのは、1980年頃からと言われている。そうすると、過失のある植林は1980年頃以降のものに限られそうだ。しかし、スギ花粉の量が増えるのは樹齢30年以上と言われているから、国の責任を問えるのは2010年以降の被害に限られるのではないか。
また、国の責任を問う切り口としては、植林ではなく、花粉症が社会問題化してきたのに、それに対して有効な解決策を講じなかったという不作為を問題にすることも考えられる。もっとも、水俣病等と比較すると、花粉症は重篤な症状を引き起こすものでもなく、患者数も極めて多く、対策費用も莫大に要するので、ある程度の対策(たとえば、先の奥野氏によると、2007年4月の朝日新聞の記事では、林野庁は花粉症対策として花粉の少ない杉に植え替えているが、その数字は全国450万ヘクタールの杉林のうち160ヘクタールにすぎないという。果たしてそれで責任を免れるといえるかは疑問だが)をとっている限り、国賠法上違法とまでは評し得ないということになるのかもしれない。
しかし、素朴に考えると、明らかに国のスギ植林政策の誤りで全国的に花粉症被害が蔓延しているのだから、林野庁の植林政策を問う国賠訴訟を起こす価値は十分にあるだろう。
投稿者:ゆかわat 19 :18| ビジネス | コメント(0 )