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2013 年07 月27 日

司法試験合格者削減の意味

26日の日経朝刊の「大機小機」の吾妻橋さんの署名記事だ。

法曹養成制度検討会議の結果である「司法試験合格者3000人目標の撤回」はおかしいとする。その理由はこうだ。「現状の約2000人の合格者でも、就職先となる法律事務所が不足し、弁護士の就職難が深刻なためというのが理由だ。実務経験の乏しい弁護士が司法サービスを担えば、消費者にも被害が及ぶという。しかし、こうした法曹界の論理は妥当なのだろうか。(略)「難関の司法試験の合格者は高給を得るのが当然」という常識を変えれば、合格者の就職先も、法律事務所に限定される必要はない。医師国家試験と同様に、法曹として必要な最低限の知識を問う「資格試験」と位置付ければ一般企業でも有資格者は歓迎され、就職先は逆に広がる。筆記試験に合格しただけで、十分な収入が保証されるギルド社会のほうがむしろ弊害は大きい。」

誠にその通りだ。司法試験は純粋な資格試験とし、法律家となる最低限の知識と能力があれば、3000人以上であろうが合格させるし、逆にその水準に達しなければ、1000人未満であろうが、合格させない。当然のことだろう。現状がそうなっていないのは、約2000人以上合格させていないのは司法研修所と実務修習受入れの容量の問題があるからだし、1000人未満とならないのは、安定的に修習を実施するためだ(もっとも、その理由は明らかにされていないから、だと思うとしか言えないが。)。
未熟な弁護士がいることで消費者にかえって弊害が及ぶというのは、それは昔だって同じであるし、逆に最近のめまぐるしい法令の制定改廃についていけないロートル弁護士の方が社会にかえって弊害をもたらす。結局、法曹人口を抑制するというのは、弁護士の自己中心的な、ギルド的発想の産物にすぎない。

そして、「多様な専門知識を持つ人材が法学の基礎を身に付ける法科大学院の役割はますます重要になる。現在、議論されている司法試験の合格率を基準とした法科大学院の統廃合は、これに逆行する動きだ。」これも誠にその通り。

「成長分野である法務サービスは、市場競争を通じた淘汰と適切な評価で質を高めるべきだ。全体の供給を制限する護送船団方式に固執すると、日本の経済にとって、コメの減反やタクシー台数抑制を上回る大きな損失になる。」

本当にその通りだ。いつから、弁護士会も大学も、こんな自分の目先の利益しか考えずに国家制度を動かすようになったのだろう。弁護士会こそ「公共哲学」と行政法を身に着けるべきだ。

投稿者:ゆかわat 08 :35| ビジネス | コメント(0 )

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