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2013 年08 月27 日

松江市教育委員会「はだしのゲン」閲覧制限撤回

27日の日経新聞の記事によると、「松江市教育委員会が市立中学校に漫画「はだしのゲン」の閲覧制限を求めた問題で、市教委は教育委員の臨時会議を開き、制限の要請は「手続きに不備がある」として撤回をすることを決めた。教育委員に諮らずに事務局が要請した経緯に疑問の声が上がり、市教委は方針の転換に追い込まれた。・・・会議後の記者会見で委員長は・・・と指摘。」ということだ。 事実関係がよく分からないところもあるが、行政法的に推測を交えながら、この記事を読み解くと 「市教育委員会が市立中学校に閲覧制限を求めた」というのは、市教育委員会が地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下単に「法」という。)23条2号の事務(学校の用に供する財産の管理に関する事務)の執行として、上級機関として下級機関である小中学校長に通達を発したということであろか。 「教育委員に諮らずに事務局が要請した」というのは、おそらくは教育委員会の議にかけずに教育長が通達を発したということを言っているのであろう。教育長は法20条によれば、事務局の事務を統括するとあるので、事務局にしかすぎない教育長が勝手に判断したといいたいのであろう。しかし、教育長というのは不思議な存在で、確かに事務局の事務を統括するのだが、教育委員会の委員の中から任命され(法16条2項)、教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる(法17条1項)ものとされている。しかも、教育委員会の権限に属する事務のうち、教育委員会の会議で決さなければならない事務の種類が法定されていないから、教育長が教育委員会の会議に諮らずに事務を執行したとしても、はたしてそれが手続きの不備にあたるとは直ちに言い難い。 だから、大津の中学校のいじめ事件でも、教育長は全面に出てきたが、教育委員会も教育委員会委員長も出てこなかったのは記憶に新しい。 最後に、「委員長が記者会見した」というのも、普通は、教育長が記者会見をしており、教育委員会の委員長が記者会見をするのは珍しい。委員長は教育委員会を代表する(法12条3項)というのに。 教育委員会というのは、まか不思議な、私から言わせると無責任の寄せ集まりのような存在であるが、今回の事件は、その問題点(教育長の権限の肥大化)を見事に明らかにするとともに、本来のあり方(独立行政委員会としての教育委員会の復権)に立ち戻るきっかけとなるのではなかろうか。

投稿者:ゆかわat 10 :19| ビジネス | コメント(0 )

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