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2013 年09 月13 日

行政裁量の司法統制

今日の日弁連の行政訴訟センターでも話題になったところであるが、行政訴訟では相変わらず行政裁量の壁をどう乗り越えるかが最大にして最後の課題である。行政裁量の司法統制を実質化・強化すべきであると言うは易く、行うは難い。

生活保護の老齢者加算廃止の違法性が問題となった事案において、
原審が専門委員会の中間とりまとめにおいて高齢者世帯の社会生活に必要な費用への配慮や激変緩和措置の実施といった点につき厚生労働大臣が具体的に検討した形跡が認められないことを理由に考慮すべき事項を十分考慮していない違法があるとしたのに対し、
最判平24年4月2日は、専門委員会の意見は考慮要素の一つにとどまるから、その意見を具体的に検討したことが記録から伺われない限り保護基準の改定は違法となるというのは行き過ぎだし、厚生労働大臣もその指摘にも配慮しているから、むしろ老齢者加算廃止の被保護者の生活への影響の程度やそれが激変緩和措置によって緩和される程度について審理を尽くさないことは違法であるとした。

要は、判断過程の合理性を審査するというときに、どの衡量利益・考慮要素を抽出するかという物差しが最高裁と高裁とで違ったのだが、どの物差しをとるべきなのかという基準が明確になっていない(判定者の価値判断に左右されている)ために、最初に結論ありき(直感的にこの程度は違法といえるか)となり、結論とあう考慮要素を抽出するという結果となっているのではないか。
そうすると、日弁連が今提案している、裁量審査の判断基準を例示するという法改正をしたところで、行政裁量の適切な司法統制は困難だと言うことにならざるを得ないように思われるのだが。

投稿者:ゆかわat 18 :06| ビジネス | コメント(0 )

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