2013 年12 月17 日
工作物責任についての最高裁判例
判例時報2200号63頁掲載の最判平25,7,12(原審が壁面に吹き付けられた石綿が露出している建物が通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時点を明らかにしないまま建物の設置保存の瑕疵があるとしたことに審理不尽の違法があるとされた事例)は違和感がある。事案は、壁面に石綿の付着した建物内で長年勤務していたから中皮腫に罹患したとして建物所有者を訴えた事件で、高裁は、建物の通常有すべき安全性とは客観的なものだから、社会通念上許容されない危険性が客観的に存在すれば瑕疵があるとして所有者の責任を認めた。
それに対して、最高裁は、通常有すべき安全性を欠くと評価されるようになった時期を確定した上でその時点以降の石綿ふん塵暴露と症状との相当因果関係が必要だと判示しました。
これは、周りから危険だと評価されるようになったときから危険な建物になったというのと同じだ。しかし、瑕疵があるものは瑕疵があるのであって、何時から通常有すべき安全性を欠くことになったかを確定する必要はないと言うのが常識的な理解だと思う。極めて違和感がある。
最高裁は、瑕疵も、通常有すべき安全性も、主観的瑕疵と同様の義務違反的な枠組みでとらえているようだ。
投稿者:ゆかわat 22 :42| ビジネス | コメント(0 )