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2014 年08 月05 日

平成26年7月18日最高裁第二小法廷判決

平成26年7月18日、最高裁第二小法廷で「外国人は生活保護法による保護の対象にはならない」という判決が言い渡された。

今回の最高裁判決は、結論だけをみると、「外国人は生活保護法に基づく保護の対象となるものではない」という血も涙もない判決に見えるが、原告の女性は既に生活保護の措置を受けており、いわば行政上の救済がなされており、裁判所が権利救済をしなければならない必要性が必ずしも高くなかった。その意味で、現在の行政実務に及ぼす影響はないし、判例としての価値もなく、そのため最高裁のホームページにも掲載されていない。

今回の最高裁判決は、国が難民条約に加入したにもかかわらず、国会があえて生活保護法だけは国民要件を改正せず、行政措置により実質的に国民と同じ扱いで生活保護措置を実施しているという行政の取扱いを是認している以上、生活保護法の解釈としては外国人は生活保護法に基づく保護の対象とならないと述べたにとどまるものだ。これは「外国人は生活保護法に基づく保護の対象となるものではない」という結論に意味があるのではなく、国会に対して生活保護法の改正を迫るメッセージを発したものと受け止めるべきだ。

そればかりでなく、今回の最高裁判決は、外国人に対する生活保護措置について、それが難民条約加入に基礎を置くものであり、国が実質的に自国民と同じ取扱いをしているという位置づけで行っていることを明らかにして、行政庁の通達に基づく行政措置としての生活保護措置が単なる国の恩恵的措置にとどまるものではないことを明らかにした。これにより、外国人が故なく生活保護措置を拒否されたときは、正面から生活保護申請却下処分の取消しを求めることはだめでも、国家賠償請求によって救済を求めることができることが明らかにされたものと考えられる。

その意味でも、今回の最高裁判決を、生活保護法の対象に永住外国人は含まれないという国際人権法的にも遅れた判決をしたものと消極的にとらえる必要はないと思う。

投稿者:ゆかわat 21 :56| ビジネス | コメント(0 )

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