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2014 年08 月30 日

前国立市長住基ネット損害賠償訴訟

東京高裁H26.2.26(判例時報2222号47頁)
前市長が住基ネットに違法に接続しなかったために本来必要ではなかった年金受給権者現況届の郵送費等の損害が国立市に生じたとして申し立てられた住民訴訟の第2弾訴訟の控訴審判決で、前市長が住基ネットに接続しなかったことは違法だが、郵送費等の支出そのものは違法ではないとして前市長に対する損害賠償請求を認容した東京地裁判決を取り消して住民の請求を棄却した。

住基ネットへの接続拒否は、私個人的には違法ではないと思うが、住基法の条文を見る限りは、市町村長に接続を拒否する権限は認められておらず、違法と言わざるを得ない。
そして、住基ネットへの接続拒否を違法という限りは、そのような違法な前市長の行為の結果、国立市としては必要のない郵送費等を要したのだから、その損害は賠償してもらうのが筋だと思うのだが、東京高裁判決はそれを否定した。結論は妥当だが、その判断の筋道は直ちにはすとんとは落ちなかった。

しかし、住民訴訟の判断枠組み自体としては、財務会計行為に財務会計法規上の違法があるかどうかで判断することになる。市長が住基ネットに接続拒否することは財務会計行為ではない。郵送費等の支出辞退1に財務会計法規上違法はない。郵送費等の支出の前提行為としての市長の住基ネット接続拒否に違法があるというにすぎず、前提行為の違法は原則として財務会計行為の違法事由を構成しないとするのが、確立した住民訴訟の判断枠組みだ。

その結果、結論としては妥当な判断となったが、やはり直ちにはすとんとは落ちない。

投稿者:ゆかわat 19 :28| ビジネス | コメント(0 )

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