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2015 年10 月23 日

国と市民社会との新たな緊張関係

 新聞報道によると、政府は16日、経済成長の基盤強化のため企業に積極的な投資を促す官民対話の初会合を開いた。安部首相は「産業界にはさらに一歩踏み込む投資拡大の具体的な見通しを示していただきたい。」と企業側に求めたという。
 
 また、19日には、安部首相の指示を受けて、総務省の携帯電話に関する有識者会議で料金引き下げ策の本格的検討に着手した。その会議の最中に、菅官房長官が定例記者会見で「大手3社が似たような料金設定をしているのは国民から見ても問題だ」と発言して、料金下げを具体的に検討するよう強く促したという。

 20日の日経新聞朝刊の「春秋」には、「民間企業が設定した価格に政府が口をはさむとは、異例中の異例である。業界の値下げ努力が足りないのは確かだが、電電公社のころでもあるまいにいささかお節介なことだ。そういえば政府は、このあいだから企業に投資拡大をしきりに促している。業績がいいのにカネを使わないのがひどく気に触るらしい。思うようにならぬ「民」にじかに切り込むところは携帯問題と同じだろう。統制経済という言葉がチラリと頭をかすめる」と、投資をどうするかは民間の自由であるのに、政府がそんなことまで介入するのかと嘆くような記事もあった。

 思うに、国と市民社会との関係は、伝統的には公権力を行使して市民社会の活動を規制する行政活動のパターンであったのが、給付行政を通して福祉国家を実現することを担うようになり、さらに規制行政だけでは不自由であるので、行政指導、さらには業界団体の自主規制を通して市民社会に介入するようになりってきた。今ではさらにこれが進んで、政府が企業に投資拡大や携帯料金引き下げまで求めるいわば口先介入をするようになってきた。これは行政指導でもないし、自主規制という名の規制でもないし、第三の規制方法か。何よりも最大の問題は、これが企業モラルの向上を求めてよりよき社会をつくるという目的ではなく、政権浮揚・維持策であることだろう。

 そういうと、横浜の傾斜マンション問題で、販売業者・施工業者はそれまでは買い取り・建替えに消極的であったのに、急に販売業者・施工業者の負担で買取り・建替えを行うと表明するようになった。消費者目線で大変喜ばしいことと思っていたが、もしかして、その裏にも、政府の口先介入があったのかしら。

投稿者:ゆかわat 11 :16| ビジネス | コメント(0 )

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