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2016 年07 月02 日

国民投票という魔物

7月1日の日経新聞「大機小機」から。

「 英国の国民投票で欧州連合EU離脱が決まってから1週間がたとうとしている。本紙に「英国民は暗闇に飛び降りた」と表現した記事があったが、まさに専門家を含め国際社会は想定外の結果にいまだ消化不良を起こしている状態だ。
 
 ただ今回の投票結果から何を読み取るべきか、少しずつ見えてきたように思う。何より国民投票が政治家に利用されやすい危険な性質を持っていることが分かった。

 国民投票は、たった一度の投票で国民に賛否の決断を迫る。大多数の国民は投票のテーマに精通しているわけではなく、声高な政治家の声に耳を傾けがちだ。

 今回の国民投票を決めたのは、キャメロン現首相だ。保守党内でEUの不満が強まってきたことへの対抗策として国民を味方につけようとしたとみられている。

 一方で同氏の盟友だったジョンソン前ロンドン市長が突如、離脱派のリーダーに変身した。島内で次期首相の基盤を固めるのが狙いだったとされる。

 彼は新聞記者として長くEU本部のあるブリュッセルに駐在し、共通ルールに固執するEU官僚を部数の多い大衆紙を舞台に批判し続けた人物として知られる。今回、移民規制を強く主張する英国独立党なども巻き込んで国民を扇動したとみざるをえない。

 それでは、僅差とはいえ離脱を選んだ英国民の選択をどうみるか。米国の有力紙は、人々は経済合理性を基準に投票行動を決めてきた「常識」が破られた、と書いた。

 多数の移民が英経済発展の原動力となってきたことは英国民の共通認識のはずだが、今回の投票で人々は経済よりアイデンティティー、つまり英国人の社会的規範やまとまりのほうを重視した、というのだ。

 翻って日本では7月10日に参議院議員選挙がある。アベノミクスは厳しい局面にあるが、野党は説得力のある対案を提示できていない。経済政策は争点にならない。

 実は「経済」以外に、私たち国民は重要な判断を迫られている。憲法改正の発議に必要な議席の3分の2の確保を自民党など改憲派に許すのか。そうなれば、その先に国民投票が想定される。政治家の意図に十分注意しながら投票会場に足を運ぼう。」


 ここからはこの論説を読んでの私の感想。国民投票を利用しようとした政治家が国民投票で足をすくわれ、国民投票で民意を示そうとした国民が実は政治家に操られている。直接民主主義の怖さを強く感じさせられた。

 同時に、今日、民主主義を操るものが、理性や知性ではなく、実はナショナリズム、感情であることも強く思い知らされた。日本でもナショナリズムの政治家が跋扈している。


 

投稿者:ゆかわat 07 :03| ビジネス | コメント(0 )

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