2017 年06 月18 日
共謀罪法成立 識者に聞く
日経新聞6月16日朝刊に「共謀罪法成立 識者に聞く」に西村幸三弁護士のインタビュー記事が載っていた。弁護士としては珍しく、共謀罪法賛成の立場からのコメント。優秀で日ごろから敬愛する氏であり、海外事情にも精通している立場から、構成要件にも問題はないとされるものであるが、新聞記事だけからは、立法目的の正当性・立法の必要性を述べるのみで、法案反対論者の懸念する構成要件の実質的関連性についての反論・検討がないように感じた。
が、しかし、ここでは共謀罪法の内容の是非はともかく、「国会審議も最後は同じ質問の繰り返しだった。議論は出尽くしており、強行採決はやむを得なかったと思う。」という最後の締めくくりには、大きな違和感を感じた。
もっとも、このコメントは記者が簡単にまとめたもので氏の言ったことではないということではあったが、氏の考えは、狭い視野と論点だけで同じ質問や意見を繰り返すばかりで、委員長解任動議などで審議を何日も飛ばして引き延ばして時間をつぶすだけの野党の戦術に委員長が激怒して審議を打ち切るのもやむを得ない、採決の是非は政治であって弁護士がコメントするようなものではないというものであった。
しかし、委員会審理を省略することを、「野党の討論の仕方がへたくそだから激怒したのもしようがない」とか「政治の問題だ」と言って見過ごすことは、許されないと思う。ここにあるのは、法律の内容の当否・理屈だけを重視し、民主主義の手続き、討論手続きを軽視する姿勢である。冷めたエリート主義、愚民軽視の発想と言ったら怒られるだろうか。
憲法は決め方の決め方を定めるもの、憲法の命である民主主義は、えらい専制君主や家長が決めるのではなく、皆で話し合いで決めるという手続き・方法を選択するということ。それがいかに専門的な事柄であって、一般人にとって容易に理解しがたいことであっても同じ。相手が理解不足のバカな質問ばかり繰り返すから、もうこれ以上やっても無駄というのは、民主主義ではない。ですから、いくら野党の論じ方が稚拙で勉強不足であっても、与党がそれを数の力で封印する、ましてや野党の稚拙なやり方に激怒して審理を省略するというのは民主主義の根幹に反することであって許されない。
憲法改正が問題となってきている今日だからこそ、法律家がまず先頭に立って、民主主義の手続きというものの価値を再確認したいものだ。
投稿者:ゆかわat 10 :39| ビジネス | コメント(0 )