2006 年07 月29 日
東京出張〜金利スワップ取引
今日は、午前10時から東京簡易裁判所の調停に出頭した。前泊が必要かと心配したが、7時の新幹線に乗れば間に合った。事案は、M都銀を相手方とする金利スワップ取引解消についての調停だ。公正取引委員会や金融庁から独占禁止法違反(優越的地位の濫用)を指摘された取引形態だ。
相手方は「優越的地位の濫用」にあたらないゆえんを様々に主張する。しかし、厳密には「優越的地位の濫用」にあたらないとしても、借入を必要とする事業者とすれば、銀行からセット商品のように金利スワップ取引を提示されれば、銀行が薦めるのであれば、その方が当面の金利負担は大きくなったとしても将来的には利益になるのだろう、それにセット商品なのだからその方が確実に借入できるのだろうと思って、金利スワップ取引の仕組みが分からないままに、金利スワップ商品を購入するのはごく自然なことだ。
それに、金融商品なのだから、嫌になれば、途中で解約できるのだろうと思うのも、ごく自然なことだ。銀行の扱う典型的な金融商品である「定期預金」にしたって、本来、満期前解約はできないのに、普通預金の金利であれば満期前解約も受け付けられているのだから。ところが、金利スワップ取引は、変動金利借入の金利ヘッジ目的の商品だというふれこみで勧誘されているのに、途中で借入を他行からの借換えで全額繰上げ返済しても、中途解約が認められず、仮に中途解約する時は、多額の解約精算金を支払う必要があるという。契約にあたって、そのことは具体的に説明すべきであるのに、説明がないままに金利スワップ取引がなされた。相手方は説明をしたというが、依頼者は聞いていないという水掛論争になってしまっている。説明をしたというのであれば、「解約時の市場実勢を基準として弊行所定の方法により算出した金額をお支払する必要があります」などという、何をいっているのか分からない抽象的なことを口頭で読み上げるだけではなく、契約当時の金利水準であれば具体的にどういう計算をして幾らになるのか、それが当時推定される将来の金利動向に照らせばどのような金額になるのかを、紙に書いて説明してそれを交付すべきだ。そこまでして初めて説明責任を果たしたことになるのではないのか。
そんな思いで、事業者はいるのだが、銀行担当者は、調査の結果独占禁止法違反の事実は認められないから問題はないの一点張りで話し合いの余地がない。これまでも都銀相手の調停を起したことはあるし、調停官としても銀行を当事者とする事件を担当したことがあるが、総じて調停での円満解決は困難なことが多い。本件もそうかな、とりわけ金利スワップ取引については全国で金利スワップ被害弁護団が結成されて訴訟も提起される状況にある中で、本件だけ調停で解決というのもないのかな、という思いもあったが、東京簡裁の調停の進め方を見るのも勉強になるし、自分が調停官として担当したなら、やはりそれだけ大きな問題であるだけに、何とか話し合いで円満に解決させたいと思うものだから、一縷の期待をこめて調停を起した。
幸いなことに、第1回期日で不調で終わることなく、次回に話し合い続行となった。話し合いの中で双方が折り合える解決策が見出されることを祈るばかりだ。
投稿者:ゆかわat 05 :37| ビジネス | コメント(2 )
◆この記事へのコメント:
◆コメント
弊社も前社長時代に都銀M行と契約した金利スワップで現在調停中です。ところが先生のこの記事にあるようにM行は頑なで、当方の言い分を聞く耳を持っていず、当方の主張を全面的に否定しているのが現状で、裁判にならざるを得ないと思っています。このように困っている中小企業の方が数多くおり、お互いに情報交換できる場があればと思います。
投稿者: 東野豊之 : at 2006 /10 /24 09 :40
◆コメント
当方も非常な損害を被っております。なんとかこの契約を
フリーズさせる手立てがないものか調査を始め、このサイト
にたどり着きました。
説明では、証券会社が倒産するなど相当の危機的状況が
起こった時ぐらいの発生頻度だとグラフで提示されており
現状、毎月のように不当な金利を要求されています。
どのように対処すればいいか途方にくれていますが、
なんとか戦ってやると思っています。
銀行担当者もおかしな商品だと認めているのに、おかしいです。
投稿者: 鈴木教科 : at 2007 /09 /05 21 :24