<< 前のエントリ |メイン | 次のエントリ >>
2006 年08 月20 日

行政サービス改革を求める緊急シンポジウム〜行政不服申立

今日(8月8日)は、日弁連行政訴訟センター主催の「行政サービス改革を求める緊急シンポジウム」出席のために東京出張。あわせて、審査請求をしている案件の審査庁である埼玉県にも足をのばした。

「行政サービス改革を求めるシンポジウム」というのは、要は、行政訴訟と行政不服申立ての法改正を求めるシンポなのだが、対象をそう限定すると問題が矮小化されるので、分かりやすいテーマ設定をした。副題は「役所が変わる 日本が変わる〜早い、分かりやすい、親切な行政を〜3つのS:Speedy,Simple and Smile」 日弁連らしくないきれいなキャッチフレーズだ。目玉は、消費者・事業者から行政に対する不満を述べさせ、それに対して国会議員からコメントをさせたこと。さながら自民党議員のオンパレードになってしまったかのような感があったが、阿倍内閣官房長官の出席が予定されていた(橋本元首相の内閣葬のために急遽欠席となったが)のも、以前の日弁連からは考えられない企画だろう。しかし、自民党あげての役所批判は、時代の変化を感じさせた。

ところで、行政活動を「公権力の行使」というフレームではなく、「行政サービス」というフレームでとらえると、行政訴訟や行政不服申立はサービスに対するクレーム・苦情ということになる。行政事件訴訟法が改正されたとは言え、行政訴訟で国民が救済されることは相変わらず難しいし、ましてや行政不服申立で国民が早期に救済されることはない現状というのは、苦情処理という面から見ると、苦情を一切受け付けない、苦情を受けてサービスを見直さないということであり、全くナンセンスとしか言いようがない。行政としては行政法規に則って適法に行政活動を行っているのだから、行政不服申立が認容されなくても当然と思っているのであろうが、苦情があるということは、サービスとしてはどこかに欠陥があると言うことなのだし、行政法規に則っているといってもそれは最低限の規格に合格しているというだけで最良のサービスではないのだから、見直すのは当然のことだ。市民社会におけるその最低のマナーを徹底することが行政不服申立の改正ということなのだと思った。

埼玉県庁訪問は、土地区画整理法に基づく仮換地指定処分に対する審査請求の関係だ。事業の進捗状況に合わせて、第一次仮換地指定処分に対する審査請求は本年2月に提起したが、第二次仮換地指定処分に対する審査請求は6月に提起した。私の依頼者2名のみならず、他にも直接審査請求を申し立てている地権者が3名いる。その審査見通しを尋ねることが訪問の第一の目的だったが、聞いたところでは、現在未済が100件程度あり、古いものから順番に処理しているとのことで、一番古いのは何時のかと尋ねたら10年前のものだというから、驚いた。慎重審理なのか、それとも事件を風化させているのかはよく分からないが、行政不服申立制度の改正はまさにこのような事態の是正にある。

ところで、埼玉県では不服申立の多い原課単位に訟務担当があるらしく、総務部でそれを集約する体制にはなっていない(文書係に通知だけはあるようだ。)。審査担当を全庁通じて1カ所に集約することのメリットが埼玉県のようなある程度大きな県では必要なことではないかと思われた。もっとも、そのような人員を配置する財政余力・人材余力があるのかどうかは分からないが。

行政不服申立制度改正の最低ラインは、権利救済の形をもう少し整えること(口頭意見陳述の対審化、早期の争点開示)。しかし、本当にユーザーが望んでいるのは、訴訟ではできない利益調整・手続の見直しをすること、すなわち裁量判断の統制・当不当の審理である。芝池教授からは権利救済もできないのに当不当の審査ができるのかという疑問が呈されたが、権利救済は訴訟で行えばよいこと。違法な権利侵害ではない行政活動に対する見直しができることにこそ、行政不服申立の真価がある。

税法の山下清兵衛弁護士は、これからは「行政上の和解」の時代だと言う。確かに税法の分野というのは、国の行政サービスに対する対価を幾らと定めて支払うかという問題で、利害関係者もいないから、最も和解に適した分野なのだろう。それに対して、仮換地指定処分に対する不服申立というのは、まさに全地権者の利益調整の見直しを求めるものだ。多数の利益の調整を行う法的システムをどのように構築するのか、これが行政不服申立の本当の課題なのだろう。

投稿者:ゆかわat 07 :48| ビジネス | コメント(1 )

◆この記事へのコメント:

◆コメント

こんばんは。社会の仕組みがよく分かってきますので、いつも興味深く読ませていただいています。内容に関するコメントではなく恐縮ですが、今日のお話のWebページのレイアウトが少し違うようで、いつもの方が読みやすいかも知れません。

投稿者: にしむら : at 2006 /08 /20 19 :55

※必須